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トヨタTHSは、どうして普及しないのか そのシンプルで複雑な仕組みと欧州のプライド高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)

前回の記事「シリーズハイブリッド、LCAを考えると現時点でベストな選択」を読まれた方の中には、こんな疑問を持たれた方も多いのではないだろうか。「シリーズハイブリッドなんかより、シリーズパラレルで万能なトヨタのハイブリッドシステムを他社も利用すればいいのでは?」

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トヨタTHS、一組のギアと2つのモーターによる万能型ハイブリッド

 トヨタTHS。それは1台のクルマを開発するためではなく、自動車の未来のために考え出されたものだった。最初からエコカーとして大ヒットさせることを狙ったのではなく、既存のエンジン車とはまったく違う方向性から、将来のクルマを考えた結果、導かれたのがハイブリッドだったのである。

 それにしてもこの手の記事を書いていていつも思うのは、書き手でさえTHSをキチンと理解していない人が多過ぎる。電気式CVTと呼ばれる変速機構を含めて、ここで少し仕組みについて触れておきたい。

 トヨタTHSは遊星ギアを用いて、エンジンと2つのモーターを連結し、状況に応じてモーターのみの走行からモーターとエンジンを組み合わせた走行、そしてエンジンで走行しながら発電機で充電するなど、柔軟に切り替えることができるものだ。しかも、それを実現しているのは一組の遊星ギアだけなので、損失も極めて少ない。

 MG1(モーター・ジェネレーター1=1基めの発電機兼モーター)は遊星ギアの中心にあるサンギアに直結していて、取り囲むプラネタリーギアを保持するプラネタリーキャリアとエンジンの出力軸が直結している。遊星ギアの外周になるリングギアには、MG2が直結(現在のTHS IIは減速機を介している)する。MG2は走行用で加速と減速時に直接駆動力を発揮するだけだ。


現行プリウスに採用されているTHS IIの仕組み。エンジンからの出力はプラネタリーキャリアに伝わり、MG1が回すサンギアの回転数によってリングギアの回転数が決まる。MG2の力は減速機を通じてファイナルギアへ伝わり、タイヤを直接回す力になる。初期のTHS、THSIIはMG1とMG2が中空軸によって同軸上にレイアウトされていたが、仕組み自体は現行プリウスと変わらない

 賢いのはMG1の使い方で、エンジンに積極的に発電させることもできるだけでなく、自らの回転数をコントロールすることで、エンジンの回転数をリングギアへ伝える際の変速機にもなる。さらに高速巡航時には変速機として役立ちながら、発電した電気でMG2を駆動して、燃費を助けるのである。

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