市場は7割減! “スーツ離れ”を断ち切ることはできるのか:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
スーツ市場が苦戦している。ピーク時(1992年)に比べて、販売数が7割ほど減少しているが、どうすれば回復することができるのか。筆者の窪田氏は……。
「作業着スーツ」が広がる
机上の空論だと思う方もいるかもしれないが、実は「制服スーツ」は既に一部企業で導入され始めており、社員のやる気がアップしたなどの効果が報告されつつあるのだ。その代表的なものが、コロナ禍で前年比400%の成長をしたことで注目を集めているワークウェアスーツだ。
洗濯可能で汚れにくい素材で、ガンガン着れる「作業着スーツ」として知られるこのワークウェアスーツ。専門店がオープンしたり、有名セレクトショップで扱われたりとかなり人気となっていることは有名だが、法人導入数1000社を超えたことはあまり知られていない。作業着スーツに社名の刺繍(ししゅう)やロゴを入れて、「ユニフォーム」として社員に支給している企業が増えているのだという。
例えば、同社のWebサイトによれば、三菱地所グループで、高級レジデンス管理員用の制服として導入されているほか、中古車販売最大手のビッグモーターが、商品の移動や車の整備、顧客対応、外回りの営業などをする従業員のユニフォームとして採用している。現場からはモチベーションがあがったなど大変好評だという。
また、東京都心部を中心に高級不動産仲介業をしているアクセルホームでは、「従業員にスーツ着用をお願いしているのは会社側なんだから、ユニフォームを支給することで従業員の金銭的な負担を軽減できないか?」(ワークウェアスーツのWebサイト)という考えから、営業担当者のユニフォームとして支給しているという。
「作業着スーツ」という分野に限っても、既にこれだけ制服化が進んでいるのだ。先ほどのような法整備が進めば、労働環境改善や福利厚生を目的として、「制服スーツ」を導入する企業が一気に増えていくのではないか。
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