不正、パワハラ、発言撤回! 三菱電機の腐った組織風土は変わるのか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
この数年で不正検査が相次ぎ発覚している、三菱電機。パワハラや長時間労働の問題もあり、2019年には20代の新入社員が自殺する痛ましい事件も起きた。組織の自浄作用が働かない要因は何なのか。三菱電機は今後、変わることができるのか──。
2019年12月。パワハラをした30代の男性会社員が、「自殺教唆の容疑」で書類送検されたことを覚えていますか?
この“事件”の舞台は、三菱電機。先月には、35年以上も続いた鉄道関連製品の検査に関する不正が発覚。株主総会で9割超の賛成票を得て再任されたトップが、そのわずか3日後の会見で辞任したという、前代未聞の事態が起きた“あの会社”です。
三菱電機では、この数年で不正が相次ぎ発覚しています。それだけではなく、「自浄作用はなかった」と元社員が嘆くほど、パワハラや長時間労働などで「生きる命」を奪われる社員が後を立たないという大問題も存在しているのです。
冒頭の事件で亡くなったのは、20代の新入社員です。19年7月から尼崎市の生産技術センターに勤務し、教育担当だった上司に、「死ね!」と言われるなどのパワハラを連日受けました。上司が新入社員の男性に対し、技術発表会に使う資料の書き直しを求める際、かなり厳しい口調で迫っていたのを、複数の社員が目撃していました(内部調査より)。それなのに、男性は8月下旬に社員寮近くの公園で、“悲しい選択”を余儀なくされたのです。
自殺教唆とは、「もともとそうしようと思っていない人に自殺を決意させて、自殺させる」犯罪です。法定刑は、「6月以上7年以下の懲役または禁錮」(刑法202条)と規定されています。事件当時、書類送検された会社員(上司)は、「死ね」とは言ってないが、類似する言葉は言ったかもしれないとの趣旨の説明をし、三菱電機側は「新入社員が亡くなったことは事実だが、それ以上は捜査中なので差し控える」とコメントしました。
三菱電機ではこの他にも、14〜17年のわずか3年間で、技術職や研究職の社員2人が長時間労働などの原因で自殺、5人が労災認定されるなど、過労死や過労自殺が繰り返されていたのに、会社の責任者からの説明は一切ありませんでした。
そして、今回の検査不正の発覚です。この件でやっと、本当にやっと「記者会見か!」と思いきや、内容は経営トップの辞任劇と、誠実とは言い難いものでした。
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