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「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのかサカタ製作所流の働き方【前編】(1/2 ページ)

「来年度の目標は、残業時間ゼロ」──社長の突然の宣言は、まさに寝耳に水の出来事だった。準備期間は1カ月。取り組み方は、各部門に任せられた。現場はどう対応したのか?

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 新潟県に本社を構える中小企業ながら、「残業ゼロ」を目指すなど先進的な働き方改革を行っているサカタ製作所。もともと同社の残業時間平均は月17.6時間(2014年度)、特に多忙な部署では月60時間ほど残業し、夜10時以降まで残る人も散見されるような「残業ありき」で回っている企業だったが、転機は突然やってきた。

 2014年11月、社長の鶴の一声で「残業ゼロ」を目指すことになり、今では、1.17時間(2020年度)にまで減少できた。しかし残業時間を減らすのは一筋縄ではいかなかった。「顧客が離れる」「残業代が減る」など社員から反発の声が上がったのだ。

 「田舎でプレス加工する中小企業」は、どのように働き方改革を推進し、定時退社が当たり前という社風に変えていったのか? 総務部の岡部美咲氏に話を聞いた。

「顧客が離れる」「残業代が減る」……反発の声にどう対応?

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総務部の岡部美咲氏にインタビュー(取材はオンラインで実施した)

 もともと、残業時間削減の目標を掲げても、顧客の要請に対応するためにはなかなか達成できず、「なあなあになっている状況」(岡部氏)だった。

 そんな同社がワークライフバランスの両立に向け大きく舵を切ったのは、14年11月。東京や大阪に勤務する社員も新潟に集めての全社集会の檀上で、社長が突然「来年の目標は残業ゼロ」と宣言したのだ。来年の残業時間目標は「20%削減」で事前合意していた役員たちにとっても、寝耳に水だった。

 社長の宣言後、あらためて15年1月から全社を挙げて残業ゼロに取り組んでいくことをアナウンス。12月のうちに各部署で業務の棚卸や効率化などの準備に取り組んだ。

 とはいえ、一筋縄ではいかなかった。社員は、これまで残業ありきで仕事が回っていたため、「残業をゼロにしたら、顧客が離れていってしまう」と反発した。これに対し社長は「売り上げが落ちてもいい。それよりも残業ゼロの取り組みを推進する」と宣言。各部署の管理職も本腰を入れて取り組むことになった。

 残業ゼロの実現のため、どのように取り組んでいくのかは各部署に任せた。製造部門では多能工の育成を進め、属人的な業務の多い部署ではペア担当制の導入や部署内での知識の共有を進めた。夕方に業務が集中する部署は、時差出勤を導入した。

 また社員の中には、残業代がなくなることへの経済的な懸念を抱く人もいた。残業しない分、確かに残業代の支給額は減ったが、社員たちの評価の方針を一新。「業務の効率化を推進して、時間内に仕事を終えられる人を評価する」と社員に通達した。

 残業ゼロに向け取り組み始めた15年当時は、実は売り上げが減少したタイミングで、本来であれば賞与は減るはずだった。

 13年、14年は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の影響で「太陽光バブル」が起き、ソーラーパネルの取り付け金具など需要が増えたので、賞与も比較的多めの額を出していた。しかし15年にはバブルが収まり、売り上げが減ってしまったのだ。

 それでも浮いた分の残業代を充てることで、賞与に関しては前年と同水準をキープした。

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