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「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのかサカタ製作所流の働き方【前編】(2/2 ページ)

「来年度の目標は、残業時間ゼロ」──社長の突然の宣言は、まさに寝耳に水の出来事だった。準備期間は1カ月。取り組み方は、各部門に任せられた。現場はどう対応したのか?

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働き方改革を「採用戦略」に

 15年は平均的な社員1人あたり月5時間ほどの残業が発生していたが、16年ごろから月1時間ほどに。午後5時半に帰宅が当たり前になった今では、まれに残業が発生した際には落たんの声が上がるまでになった。考え方が全く変わり、「残業はないのが当たり前」というスタンスが浸透したという。社員からは、「家庭で過ごす時間が増えた」と喜びの声が寄せられる。

 こうして残業時間の大幅削減に取り組むうち、仕事だけではなく、家庭生活の充実を意識することで、社員に「この会社に長く勤めたい」と思ってもらえるのではという発見があった。

 同社の採用情報ページでは現在、残業ゼロ方針や男性の育休取得率100%の実績が押し出されている。これには同社の採用戦略が隠れている。

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ワークライフバランスを重視した取り組みを押し出している=同社の採用情報ページより

 同社は「田舎でプレス加工をする中小企業」(岡部氏)で、華々しい最先端技術を扱う業種ではなく、業務内容での差別化が難しい。若い人材を確保したいが新卒に興味を持ってもらいづらいため、中途の若手に振り向いてもらいたい。そこで、今の職場では家庭生活との両立が難しいと感じている20〜30代に対し、ワークライフバランスを重視している社風をアピールする戦略に出た。実際に、ワークライフバランスを保ちやすい環境に魅力を感じて応募する人が増え、求人面でも好影響があった。

地方の中小企業ながら、21年もテレワークを実施

 初の緊急事態宣言が発令された20年4月には、新潟県内でもテレワークする企業は多かったが、「今なおテレワーク続けている地方企業、それも製造業の中小企業は、あまりないのではないか」と岡部氏は言う。

 東京・大阪の支社はほとんどテレワークに移行しているほか、新潟の本社でも週に数日などのペースでテレワークが定着している。岡部氏が所属する総務部では、2グループに分けてテレワークと出社を2日おきにする体制を築いている。経営層は、コロナ禍の収束後も柔軟な働き方の一つとして、今後もテレワークを積極活用する方針だ。

臨時休校時には子連れ出勤も許可

 学校が臨時休校になったときには、子連れ出勤も許可していた。共働き家庭の社員などの子どもたちに食堂を解放。子どもたちはおもちゃを持ち込んで遊んだり、課題を進めたりして過ごしていた。特に見守り当番などは決めていなかったが、社員が交代で見守った。

 当時はテレワークを始めたてで業務環境の整備が完全ではなく、また子どもがいる家では集中できないという声が寄せられていた。子連れで会社に来れば子どもを預けて仕事に集中でき、昼食は会社側が全額負担で弁当を用意するため、子どものご飯の準備の心配もない。1日平均5人ほどの子どもが訪れ、検温をしたうえで預かった。

 このように、残業時間の大幅削減やテレワーク常態化など、働き方改革を推進していったサカタ製作所。これらと並行して、ある社員の声から男性育休の取得率大幅アップにも取り組んだ。さまざまな施策を講じ、14年までは取得事例ゼロだったにもかかわらず、18年には取得率100%にまで引き上げることに成功。その後も男性育休取得率100%をキープしている。どんな工夫をしたのかは、後編でお届けする。

【後編】男性育休「渋々取得」→100%に! 社内の雰囲気が激変、サカタ製作所で何が起きたのか

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