パナソニック新CIO、玉置氏を導いた思想 「CIOは経営者」「話を聞いてもらうために偉くなる」:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 パナ新CIOの本音【前編】(1/3 ページ)
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命保険でCIOを務め、5月にパナソニックのCIOに就任した玉置肇氏。大学時代はサルの研究者を目指していたという玉置氏が、CIOの道を歩み始めたきっかけは、何だったのか。そして、今考える「CIOのあるべき姿」とは。
連載:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」
東急ハンズCIO・メルカリCIOなどを務め、現在は独立してプロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の道を進む長谷川秀樹氏が、個性豊かな“改革者”をゲストに酒を酌み交わしながら語り合う対談企画。執筆はITライター・ノンフィクション作家の酒井真弓。
プロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の長谷川秀樹氏が、改革者と語り合う本対談。今回のゲストは、5月にパナソニック CIO(最高情報責任者)に就任した玉置肇氏。P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命保険と、複数のグローバル企業でCIOとしてのキャリアを積んだ玉置氏が、ついに歴史ある日本企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)に挑む。
左から、5月にパナソニック CIO(最高情報責任者)に就任した玉置肇氏、筆者、長谷川秀樹氏。取材は、玉置氏がパナソニックに入社前の4月中旬に実施した(当時所属は、アクサ生命保険 チーフソリューションズオフィサー)
玉置氏は、始めからビジネスでの成功を目指していた訳ではない。大学院までは、研究一筋、研究対象はサルだった。バブル景気に湧く街に目もくれず、来る日も来る日も山に登ってサルを観察した。しかし、研究資金が底をつきた。教授になる夢を諦め、P&Gに入社。会社の窓からサルと過ごした山を眺めては、「帰りたい」とつぶやいていた。
そんな玉置氏が、CIOへの道を歩み始めたきっかけは、何だったのか。そして、今考える「CIOのあるべき姿」とは。
「偉くなったらええ」と気が付いた
玉置: 修士で研究を辞めて、P&Gの経営システム本部に入社しました。サルの行動解析でシステムを使っていたので、システム系を選びました。これが後の人生を決めているわけです。でも、最初の1年は毎日山を眺めていました。
長谷川: 当時の外資系は、帰国子女とかイケてる人が多かったでしょう。
玉置: 自分に自信がある人ばかりでした。入社2年目になる頃には、同期は英語でガンガンしゃべってバリバリ仕事して、頭角を現し始めていて。なのに僕は会議でただ座っているだけ。これではまずいし、「山にはもう帰れないな」と悟ったこともあって、勉強し始めました。
昔から僕はおしゃべりが大好きで、一番嫌なのは自分の話を聞いてもらえないこと。でも、地位と英語と中身がないと誰も話を聞いてくれない。話を聞いてもらうためにはどうしたらいいんだ。そうだ、偉くなったらええんや。それに気が付いてからが、P&Gの本当のスタートです。
長谷川: 「偉くなったら話を聞いてくれる」というのは、いいポイントですね。社内でクラウドや新しい技術を推進している人の中には、上司の反対に押し切られた経験のある方も多いと思います。でも、それも偉くなったもん勝ち。偉くなればクラウドでも何でも自分の信じる道を進んでいける。少なくとも周囲が聞く耳を持ってくれるようになります。
玉置: 僕はしつこいから、一度こうと決めたら、ずっとやる。とにかく必死にやって、30代で日本のP&GのCIOポジションに就きました。
「CIO」と「情シス部長」の決定的な違い
長谷川: CIOと情報システム部長の違いは何だと思いますか?
玉置: 経営視点があるかないかです。情シス部長はマスター・オブ・エンジニア。オーダーに対し、きちんと高品質のものを納入するのが情シス部長。一方、CIOは経営者です。視座を上げる必要があります。
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