パナソニック新CIO、玉置氏を導いた思想 「CIOは経営者」「話を聞いてもらうために偉くなる」:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」 パナ新CIOの本音【前編】(2/3 ページ)
元メルカリCIO長谷川秀樹氏が、IT改革者と語る「IT酒場放浪記」。今回のゲストは、P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命保険でCIOを務め、5月にパナソニックのCIOに就任した玉置肇氏。大学時代はサルの研究者を目指していたという玉置氏が、CIOの道を歩み始めたきっかけは、何だったのか。そして、今考える「CIOのあるべき姿」とは。
長谷川: 僕は東急ハンズ時代、CIOに加えて通販事業部長を兼務していたので、PL(損益計算書)を見ながらIT投資を考えていました。他にも店舗出身のメンバーがいて、毎日欠かさず売り上げを見ては、システムの提案をしていましたね。
でも、一般の情シス部長はなかなかそういう機会がない。どうしたら経営視点を持てるようになるのでしょうか。
玉置: 情シス部門はどこの会社も歴史的に地位が低い。システムは動いて当たり前。止まったら文句を言われる。マイナス評価の部門は自然と地位が低くなるんです。そういった環境で働いてきた人がいきなり経営目線を持つなんて難しいですよね。
でも、僕が言うことは皆さん明日からでも実践できます。まずは、自分の会社の経営に興味を持つこと。四半期ごとの決算発表などを見れば、自社のPLやBS(貸借対照表)が分かってくる。
次はそれを情シスのメンバーに伝えること。「こういう状況だから、私たちは今このプロジェクトをやるんだ」と、情シス部門の中でロジカルに説明できるようになることです。
ポイントは、時価総額や次の決算の見通しなど、大局観を養うこと。なぜうちはこんなに時価総額が低いのか、次の決算ではなぜここまで上がる見通しなのか、考えても分からなければ経営者に聞けばいい。あってはならないことですが、自社のPLを知らない情シス部長って少なくないと思うんですよね。
CIOは社長がやればいい
玉置: CIOのミッションは「変革」です。CSO、CFO、CMOなど全ての“CxO”に言えることですが、企業文化や働き方にまで踏み込んだ変革は、経営視点を持つ者にしかできません。極論を言えば、社長がCIOをやったっていいんです。
筆者: 玉置さんの言う「変革」って、「改善」とはどう違うのでしょうか?
玉置: 「変革」と「改善」は全く別ものです。改善は、前よりちょっと良くすること。これは誰にでもできます。一方、変革はディスラプティブ・イノベーション。つまり、違った考え、違ったやり方を取り入れ、全く違うものに変えていくことを指します。
筆者: 情シス部門だとイメージが湧きやすいのですが、経理部門や営業部門の変革って何だと思いますか?
玉置: 接待やゴルフが営業の仕事だと言う人もいますよね。昔はお客さんと仲良くなることが営業の大事な役割だったと思いますが、今は違いますよね。
私がパナソニックのCIOに就任する際には、お花やお祝いの品をあらかじめ一切お断りさせていただきました。オフィスが3カ所あるし、後片付けをする方も大変です。その代わり、良き提案をお待ちしていますと伝えました。変革に寄与するソリューションの提案はもちろん、胡蝶蘭の分コストを下げてくれるとかね(笑)
長谷川: 一部で、いまだにそういう付き合いを好むCIOがいるんですよ。あいさつに来た人数が多いベンダーに発注するとかね。
玉置: そういう考えや習慣が、日本経済を衰退させていると思いますね。
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