オープン初月で全店黒字化 24時間無人の古着店「秘密のさくらちゃん」を読み解く5つの秘密:コロナ禍で4店舗を展開(3/3 ページ)
コロナ禍でアパレル企業の業績が落ち込む中、続々と出店数を伸ばしている24時間無人の古着店がある。「秘密のさくらちゃん」だ。2020年1月に1号店を出店し、7カ月で4店舗まで拡大、全店でオープン初月黒字化を達成している。秘密のさくらちゃんを読み解く5つの「秘密」を探った。
ファッション業界の大量廃棄問題に立ち向かう
秘密のさくらちゃんの最後の秘密は、ファッション業界の大量廃棄問題に立ち向かおうとしていることだ。草加店と盛岡店に古着の回収ボックスを設けており、客に不要になった服、カバンや靴などを持ってきてもらうようお願いしている。
環境省の「サステナブルファッション調査」によると、75%の人が洋服を可燃・不燃ごみで処理しているという。「手間や労力がかからないこと」が理由として多く挙げられており、捨てた服が環境に与える影響を考えている人は少ないようだ。
また、服がゴミとして廃棄された場合、再資源化される割合は5%ほどで、多くはそのまま焼却・埋め立て処分されるという。その量は年間で約48万トンに上り、大型トラック約130台分を毎日焼却・埋め立てしている計算になる。
18年にファッションハイブランドのバーバリーが42億円相当の売れ残り商品を焼却処分したというニュースが世間を騒がせた。多くの消費者が同社を非難したものの、自分たちも日々同じことをしているのだ。
秘密のさくらちゃん草加店と盛岡店の回収ボックスには、それぞれ週に200キログラムほどの古着が集まるという。同店では回収ボックスの中から、まだ着られるものは再び店頭で販売し、そのほかは海外に送るなど積極的にリユースに取り組んでいる。
古着回収を始めた理由について、岡本氏は「30年ほど前に米国に住んでいたことがあります。ショッピングセンターに行くと、店の一画に古着を回収するボックスがあり、そこで回収された古着が中古のセレクトショップで販売されていました。品質がよく、使い続けられるものが捨てられてしまうのは非常にもったいないと思います。当時、そのセレクトショップで購入した机を今でも使っています。まだ使えるものを大事に使うことで、環境に負荷をかけずにオシャレを楽しむことができるのです」と話す。
岡本氏は、古着回収のインフラが整備されていないことが、日本で古着のリサイクルが進まない理由だと指摘する。日本は技術力が高く、マテリアルリサイクル(洋服をナイロンやポリエステルなどの原料まで戻してから、新しい洋服に再生すること)も可能だが、古着などのノーブランド品は、着なくなったら捨てられてしまう。安定的にリサイクル用の古着を確保することができれば、マテリアルリサイクルのコストも下げられるため、ファッション業界で持続可能な循環を作ることができるという。
岡本氏いわく、リサイクルショップや古着店で販売されている商品はブランド物など、価値が分かりやすいものに絞られており、アパレル業界全体の廃棄量の数%だという。
「リサイクルショップの店頭に並ぶ古着は限られています。ノーブランドの古着は検索性が低いのでインターネットで販売してもなかなか売れません。そういった商品を秘密のさくらちゃんで取り扱ったり、回収してリサイクルに回したりしています」(岡本氏)
環境負荷の観点から考えると、もう一度着る、長く着ることがベストではあるものの、汚れてしまったり、破れてしまったりすることもあるだろう。そういう古着を一度素材に戻し、生まれ変わらせることによって、また違う洋服になって消費者に届けることができる。こうした循環を作っていくことが、ファッション業界の大量廃棄問題の解決につながっていくという。
今後の展望について岡本氏は「秘密のさくらちゃんを立て続けに出店させているのは、ビジネス拡大が主目的ではありません。日本中に古着回収ボックスを備えた無人の古着店を出店することで、世界で2番目に環境への負荷を与えるといわれているファッション業界の大量生産大量廃棄の解決に寄与していきたいです」と話した。
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