夢破れた格闘家、年商1億円の社長に NTT東、プリマハムも認めた「儲かる畜産」:畜産業界のAIカンパニー(1/4 ページ)
格闘家人生を諦めた吉角裕一朗さんは、社長を目指し、地元熊本で2つの事業を立ち上げた。それぞれ年商1億円規模に成長させている。東京で夢破れた若者が、格闘技とはまったく関係のないビジネスの世界でなぜ成功することができたのだろうか。
「プロの格闘家」として生計を立てられる人は何人いるのだろうか。吉角裕一朗さんは22歳で格闘家の夢を断念。そこから地元の熊本に帰り、車の中古バッテリー販売事業に着手する。初年度は年商10万円だったが、2年目には1億円を達成した。
次の挑戦は、レガシー業界を代表する「畜産業」にテクノロジーを使って変革を起こすこと。創業約1年半で年商1億円まで成長させた。NTT東日本やプリマハムなど、超大手企業との協業もあり、来期は6、7億円の見込みだという。格闘家の夢に敗れた若者は、どのように自身のキャリアを積み上げていったのだろうか。
吉角さんが格闘技を始めたのは18歳のときだった。地元の熊本から上京し、都内の格闘ジムに通いはじめた。「プロの格闘家として生きていく」という思いで日々練習に打ち込んでいたという。しかし、当時、新進気鋭の柔道家として知られていた青木真也選手と合同練習で対戦し、「この人には勝てない」と自分の限界を感じた。格闘家になる夢を諦め、2年ほど専門学校に通うことになる。
「専門学校に通っていた2年間は、次のステップに進むための”療養期間”のつもりでした。それまでの自分には格闘技しかありませんでした。その格闘技で大きな挫折を味わったことで、どうしたらいいのか分からず、何かをすぐに始めても、うまくいかないような気がしていました」(吉角さん)
2年間の”療養期間”を経て、吉角さんも就職活動をすることになる。そこで人生の転機が訪れた。就職イベントで出会った、ある社長との話を通して、世の中は「ルールの中で動く側」と「ルールを作る側」に分かれていることに気づいたという。フレームやルールを作るほうが得意だと思った吉角さんは、社長になることを決めた。挫折を経験した東京を捨て、故郷の熊本でビジネスを始めようと意思を固めた。
しかし、「社長になろう」と決めたはいいものの、何をすればいいか見当がつかない。まずは、父親から「米国で流行っているビジネスらしい」と紹介された「車の中古バッテリー販売事業」を始めた。廃棄バッテリーを回収し、中古商品として販売する事業だ。
着手したはいいものの、北京五輪の影響で金属の値段が高騰。それに伴い、本来タダ同然に入手できるはずの廃棄バッテリーの値段も上がってしまった。商品が手に入らない状態が続き、1年目の年商は10万円。2年目には廃品回収の元締めからバッテリーをまとめて購入することに成功した。事業が軌道にのり、2年目で年商1億円を達成した。
吉角さんは、中古バッテリー販売事業を通し、「経済と資源の循環」という考え方に共感するようになったという。
「本来そのままゴミになってしまうモノをリサイクルして販売する。それを誰かが使い、不要になったら捨てる。捨てられたモノを回収、リサイクルしてまた使えるようにする。このサイクルによって、捨てられるモノを経済の中に戻すことができる。経済を回しながら資源を循環させるエコシステムが実現できると感じました」(吉角さん)
中古バッテリー販売事業を通して、バッテリーの仕組みや技術に興味を持ち、そこからテクノロジーにも関心を寄せるようになった吉角さん。父親が畜産関連の仕事をしていたことから、次は畜産×テクノロジーに可能性を見いだす。
畜産DXを掲げる「コーンテック」を立ち上げ、AIカンパニーとして「儲かる畜産」の仕組み構築に挑戦していく。現在は設立約1年半にもかかわらず、NTT東やプリマハムなどの大手企業と提携するほどに成長している。
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