夢破れた格闘家、年商1億円の社長に NTT東、プリマハムも認めた「儲かる畜産」:畜産業界のAIカンパニー(2/4 ページ)
格闘家人生を諦めた吉角裕一朗さんは、社長を目指し、地元熊本で2つの事業を立ち上げた。それぞれ年商1億円規模に成長させている。東京で夢破れた若者が、格闘技とはまったく関係のないビジネスの世界でなぜ成功することができたのだろうか。
畜産業界の危機。50年後、日本で「肉」が食べられなくなる?
日本人の食生活は、直近50年で欧米化が進み、食肉消費量は年々増加傾向にある。そんな私たちの食生活を支える上で“畜産業”は欠かせない存在だ。
おかげで、スーパーには精肉が並び、弁当店やコンビニではハンバーグ弁当が購入できる。しかし、そんな「当たり前」が50年後にはなくなってしまうかもしれない、という危機感を吉角さんは持っているのだ。
最大の要因は、家畜が食べるエサのコストが膨大なことだ。農林水産省によると、豚のエサ代は経営コストの66%を占めるという。
「日本は、家畜のエサの約9割を海外からの輸入に頼っています。日本人が食べる米の約2倍の量のトウモロコシを毎日輸入しており、だいたい1日5万トンに上ります」(吉角さん)
スカイツリーの重さが3万6000トン。それを大幅に超える量が毎日輸入され、家畜のエサになっていく。現在の日本の畜産業が成り立つのは、海外から毎日エサの穀物を仕入れるだけの経済力があるからだ。しかし、中国やインドの力が強くなることで、相対的に日本の購買力は落ちる。継続的にエサを輸入できなくなれば、畜産業は衰退していくかもしれない。
現在、畜産DXに取り組む吉角さんだが、その始まりも父親がきっかけだった。1995年、家畜用のトウモロコシの無税輸入化を機に、父親が渡米した。医薬品卸売りの会社で、家畜に投与する薬品を扱う部門に勤めており、「エサのコストが下がれば、その分、薬を買ってくれる人が増えるのではないか」という発想からだった。
帰国後、米国で作られたエサ配合プラントをもとに、エサのコストを削減できる日本版プラントを作り出した。その結果、コーンテックでは、畜産のエサを安く作るための「飼料マネジメント」と畜産農家が自らエサを配合できる「自家配合プラントの構築」を手掛けることになる。
畜産農家の多くが、年間を通して家畜に同じエサを与えているのが現状だ。しかし、エサの配合においては温度と湿度が最重要。そのほかにも、豚舎内の環境や豚の育成状況、遺伝的要素など複合的な要因を考慮する必要がある。それらすべてを人間の手で管理するのは、あまりにも非効率だ。
「エサの配合は、今まで勘と経験に頼っていた部分が大きかったです。自家配合プラントを導入した畜産農家では20〜30%のコスト削減を実現しました。AIカメラやIoT技術を活用することで、より効率的な養豚が可能になるのではないかと考え、新しいチャレンジのためにクラウドファンディングで資金を募りました。」(吉角さん)
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