夢破れた格闘家、年商1億円の社長に NTT東、プリマハムも認めた「儲かる畜産」:畜産業界のAIカンパニー(3/4 ページ)
格闘家人生を諦めた吉角裕一朗さんは、社長を目指し、地元熊本で2つの事業を立ち上げた。それぞれ年商1億円規模に成長させている。東京で夢破れた若者が、格闘技とはまったく関係のないビジネスの世界でなぜ成功することができたのだろうか。
クラウドファンディングで3000万円集める
AIとIoT技術を活用した最先端の自家配合プラント構築を目指し、クラウドファンディングで資金を募った。プラントは、従来必要だったオペレーターや配合担当者を不要とし、24時間自動で稼働する。それだけにとどまらず、家畜の体温や体重などの生態情報をカメラで撮影してデータを収集。AIでデータを分析して、最適なエサの配合をフィードバックする仕組みの構築を目指した。AIに興味を持つ人、IT企業などから合計3000万円の資金が集まったという。
一次産業は業界に閉じたイメージが強い。このような取り組みの理由として、吉角さんは「畜産は一般の人からすると馴染みにくい業界です。畜産業が抱えている課題に目を向けてもらいたい。また、社会的な注目を集めることで異業種と連携する機会を生み、畜産を超えた発展的な取り組みにつながることを期待しました」と話す。
エサ配合の効率性を高めるだけではない。コーンテックでは畜産農家に対し、エコフィード(食品残さなどを利用して製造された飼料)を積極使用した、輸入に頼らない畜産サイクルを構築する飼料マネジメントも行う。
農林水産省が20年に発表した調査によると、国内の食品ロス量は年間612万トン、およそ東京ドーム5杯分に及ぶ。パンの耳、焼酎を製造する際に出るカスや菓子など、人間の食べ残しを飼料として家畜に与えることで、海外からのエサの輸入コストを格段に抑えられる。
コーンテックは、「自家配合プラント構築」と「飼料マネジメント」により、持続可能な畜産業の在り方を作り上げている、これは、吉角さんが中古バッテリー販売事業を通して実感した「経済と資源の循環」にもつながる。人の食べ残しなど本来捨てられてしまうモノを再利用し、家畜のエサとして経済活動に組み込んでいく。
現在の導入企業数は約100件で、コストは概算で年間500億円程度下がっているという。
「レガシー業界は年長者が強く、後発が追い付けない仕組みができあがっています。しかし、テクノロジーを活用することで、パフォーマンスが向上し、経験と勘に頼らずに成果を上げていくことができます。私は釣りが趣味なのですが、潮の満ち引きや風の状態が見られるアプリを使っています。テクノロジーを活用するだけで経験者よりも多く釣れます。テクノロジーは後発優位をもたらすのです」(吉角さん)
その言葉通り、コーンテックは安定的な成長を続けている。19年に設立し、現在の年商は1億円。来期は6〜7億円を見込んでいるという。
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