なぜ「はま寿司」のデータを欲しがった? 「かっぱ寿司」転落の背景は“伝統の否定”:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
「かっぱ寿司」の運営会社が不正競争防止法違反の容疑で刑事告訴された。「はま寿司」の日次売り上げデータを受け取っていた。かつてイケイケだったかっぱ寿司はなぜ追い込まれたのか。
はま寿司「改革」の結果を知りたかった?
かっぱ寿司の田邊社長は、20年11月に顧問としてカッパ・クリエイトに入社。同年12月に執行役員副社長にいきなり抜てきされ、21年2月に異例のスピードで社長に昇進している。大戸屋を強引に買収したコロワイドの蔵人金男会長や野尻公平社長が、田邊氏にゾッコンだったと推察される。
コロナ禍以降、かっぱ寿司とはま寿司の目指す方向性は似てきている。4大回転寿司のうち、スシローとくら寿司は都心部、特に東京都心部の飲食ビル・雑居ビルの空中階が空いてきたのを千載一遇のチャンスと考え、家賃が落ちた物件を狙って出店してきている。握り立ての寿司を客席に速達する専用レーン(いわゆる特急レーン)も設置するが、従来の回転レーンも維持する店づくりを行っている。
一方、かっぱ寿司とはま寿司は、あくまで車で行ける郊外立地で、都心部進出に熱心でない。実際、飲食店は郊外のほうが好調なのだ。非接触を考え、専用レーンに特化した「魚べい」や「元気寿司」を運営する元気寿司が取り組む“回転しない寿司”へとシフトしようとしている。はま寿司はコロナ禍が本格化する3年ほど前から、食品ロスを考える中で廃棄を減らすなら“脱回転”だろうという視点で実験を重ねている。20年3月、感染予防の観点から回転レーンでも注文は全てタッチパネルのみで受け付けている。
かっぱ寿司も、17年頃からやはり食品ロスを軽減するため、“回転しない寿司”への改装に舵を切っている。コロナ禍になり、はま寿司とほぼ同じタイミングで、回転レーンでもタッチパネルからの注文のみに変更した。
しかし、田邊社長がはま寿司を離れて数年が経過しており、現状を詳しく知っているわけでない。はま寿司は上場会社ではなく、ゼンショーもすき家のように月次の売り上げデータを公表もしていない。何とか、はま寿司の売り上げ実態を知りたいというのが、コロワイド側の本音だったのではないか。
田邊社長が元同僚からはま寿司の日次売り上げデータなどを数回にわたって受け取っていたのは、社長に就任する前の20年11〜12月だ。
はま寿司は11月、値段を100円(平日90円)に据え置きのまま、主力のマグロのネタを20%、サーモンのネタを25%増量する大きな商品改革を行っている。その効果をどうしても知りたかったのではないだろうか。
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