なぜ「はま寿司」のデータを欲しがった? 「かっぱ寿司」転落の背景は“伝統の否定”:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
「かっぱ寿司」の運営会社が不正競争防止法違反の容疑で刑事告訴された。「はま寿司」の日次売り上げデータを受け取っていた。かつてイケイケだったかっぱ寿司はなぜ追い込まれたのか。
先端を走っていたかっぱ寿司
かっぱ寿司の社史を振り返ってみよう。
かっぱ寿司を展開するカッパ・クリエイトは1979年、食料品店やスーパーに寿司などを販売する事業を営んでいた創業者の徳山淳和氏が、長野市に1号店(西和田店)を出店。当初の社名は長野フーズだった。
かっぱ寿司は他の回転寿司店と差別化するために、最初はコンベヤーを使わず水流で桶に入った寿司を回していた。水に桶がプカプカと浮かぶ様が、かっぱのお皿のように見えることから、かっぱ寿司の屋号とイメージキャラクターを考案。このように、かっぱ寿司の名称は人マネせずに新しいことにチャレンジする象徴的な意味合いを持っていた。
93年に100店を突破。98年からは全品100円均一店への転換を開始。99年より従来の50席が標準になっていた席数を120席に拡大した大型店を出店し始めた。2001年には寿司業界最大規模の300席を持つ店舗を東京都練馬区に出店。以降は、他チェーンを圧倒する大型化と100円均一の低価格で、かっぱ寿司は一世を風靡(ふうび)する。03年にカッパ・クリエイトは東京証券取引所一部上場銘柄となり、200店を突破した。
04年5月期の決算では、年商640億円に対して営業利益は87億円もあった。ちなみに、コロナ禍前の20年3月期では年商748億円に対して、営業利益は11億円だった。
05年には、タッチパネルと特急レーンを導入し、子どもたちに人気を博した。この頃のかっぱ寿司の業界首位の「無敵感」は半端なく、まさに先端を走っていた。
“一人負け”状態になったかっぱ寿司
かっぱ寿司の迷走の始まりは、07年にゼンショーが株式の約3割を取得して筆頭株主になったことだ。同年にゼンショーはスシローの筆頭株主にもなっていた。牛丼「すき家」で成功した勢いに任せて、今度は当時の業界の1、2位を掌中にして、経営統合により業界の主導権を握ろうとしていたとされる。この業務提携は両チェーンから反発を受けて実らず、程なく解消されている。これ以降、ゼンショーは自社開発したはま寿司の強化に専念した。
ゼンショーが突然買収に動いたのは、創業家の徳山家が株を売却したためだが、さすがにスシローとの統合はないと思ったのか、すぐに買い戻している。
しかし、アベノミクスによるデフレ脱却の波に乗れず、13年決算では過去最高の941億円の売り上げに達したが、最終赤字22億円を計上した。14年は、不採算店を59店と大量に閉めたため、最終赤字が71億円まで膨らんだ。ここからかっぱ寿司は、地滑り的に年商を減らしていく。スシローには11年に売り上げを抜かれていたが、くら寿司、はま寿司にも抜かれ“一人負け”状態で業界4位に転落していくのだ。
徳山家は13年、経営陣に見切りを付けて米卸の神明に株式を売却。神明は、傘下の業界5位元気寿司に、かっぱ寿司の再建を託した。しかし、売り上げが下位の元気寿司が、かっぱ寿司を指導するのは無理があり、神明は経営統合が難しいと判断して1年で断念。保有株式を14年に、コロワイドに売却した。15年の最終赤字はさらに増え135億円となった。
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