なぜ「はま寿司」のデータを欲しがった? 「かっぱ寿司」転落の背景は“伝統の否定”:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)
「かっぱ寿司」の運営会社が不正競争防止法違反の容疑で刑事告訴された。「はま寿司」の日次売り上げデータを受け取っていた。かつてイケイケだったかっぱ寿司はなぜ追い込まれたのか。
難しかったかっぱ寿司の復興
コロワイドは「甘太郎」「北海道」などの居酒屋ブランドを有し、ワタミ、モンテローザと並んで「居酒屋新御三家」と呼ばれたりもしたが、もうこの頃から居酒屋主力では未来がないと、脱居酒屋に舵を切っていた。新型コロナの感染拡大で、慌てて脱居酒屋に走っているわけでなく、先見の明があった。12年には焼き肉業界トップ「牛角」などのチェーンを有するレインズインターナショナルを買収し、短期間で再生させていた。
焼き肉に続いて回転寿司も再生させれば、いかに有利か。ただし、かっぱ寿司の復興は一筋縄ではいかなかった。
コロワイドは、レインズ前社長の五十嵐茂樹氏をカッパ・クリエイトの新社長に選定し、最高の人事でかっぱ寿司再興に臨んだはずだった。ところが、かっぱ寿司のブランド毀損は牛角の比ではなかった。「かっぱ寿司はおいしくない、ネタが小さい」といった負のイメージがついてしまい、原価率を上げて創作寿司を投入するなど、スシローをベンチマークしたような施策を続けたが、コロワイド首脳陣が期待するほどのV字回復はできなかった。それでも、16年3月期決算は53億円の最終利益を確保した。
16年、レインズ出身の四方田豊氏が社長に就任。長年親しまれてきた緑色のかっぱのロゴを、安っぽいイメージの象徴として、金と赤の皿を重ねたシンプルな図案に変更した。しかし、「かっぱ」は創業の頃から斬新な回転寿司の象徴として使ってきたもの。看板からかっぱが消えたことで、消費者の目にはますます凡庸なチェーンに映り、17年決算は58億円の最終損失となる大失敗に終わった。
また、16年にリニューアルされた三鷹店などは、かっぱ寿司の特長であった特急レーンが消失した平凡な回転寿司店で、失望させられた。会社の伝統を全否定したのが敗因だ。
これはマズいと、17年にはコロワイド傘下の水産加工・卸であるバンノウ水産の社長だった大野健一氏が、かっぱ寿司の新社長にスライドしてきた。「かっぱ寿司は崖っぷち」などと訴える自虐CMを作成。「回転寿司の顧客単価が1000円程度なのに、1500円の食べ放題は高い」と競合チェーンが冷ややかに見る中、食べ放題企画を決行。SNSは食べ放題を歓迎する書き込みで大いに盛り上がったが、常連離れを加速させる負の側面もあった。18年の決算では最終利益は8億円と黒字転換したが、売上高787億円は前年比0.9%減で、パッとしなかった。なお、大野氏は過去のコンプライアンス違反とされる謎の理由で、わずか11カ月ほどで辞任した。
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