小山田圭吾炎上騒動に学ぶ、企業担当者が「ブラック著名人」とのコラボを避ける方法:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
東京オリンピック開会式の作曲担当をしていた小山田圭吾氏が、辞任する意向を関係者に伝えたという。それにしても、大会組織委員会はなぜ小山田氏を起用したのか。過去をちょっと調べれば、同級生や障害者をいじめていたことが分かるはずなのに……。
起こるべくして起きている
できるわけがない。なぜこんなことが断言できるのかというと、実は筆者も似たような経験があるからだ。もうかなり昔になるが、ある企業から、新しいテレビCMを検討しているので、どのようなリスクがあるのかを評価して、炎上した際のコメントなどの対策をたててほしいという依頼があった。
起用をしているタレントを調べたら、SNSで悪い話が流れていて、炎上までいかずともブスブスと燻(くすぶ)っていたことが分かった。そこで担当者にすべて報告して、最も安全なのは、違うタレントを起用することだと進言した。しかし、結局そのタレントでCMは放映された。筆者が進言したものの、広報部でタレントのキャスティングを覆すほどの「権限」がなかったのだ。
その後、案の定というか、このCMはネットで叩かれ、「なぜあんなタレントを起用するのだ」と企業も批判された。外部の専門家も「情報収集ができていない」「危機意識が乏しい」などと指摘をしたが、実はこの企業の真の問題はそこではない。セクショナリズムがまん延して、組織全体のリスクを指摘して改善するような「権限」を誰も持っていなかった点なのだ。
このように「危機に弱い組織」は、往々にして広報や総務といった管理部門が弱いケースが多い。逆に、社長直轄の広報や秘書が危機管理を担うような組織は、不測の事態にも対応できる。
組織委員会が前者であることは言うまでもない。「多様性と調和」という「五輪の魂」とも言うべき重要な要素をチェックする部署、責任者は本来ならば、武藤事務総長の真横にあってもおかしくない。しかし、総務局人事部という、取ってつけたと勘違いされてもおかしくないようなポジションに冷遇されている。
こんな論理破綻した組織で、「多様性と調和」「差別禁止」が実現できると考えるのは虫が良すぎる。「呪われた五輪」と皮肉られるほど、組織委員会には人権関連の不祥事が多発しているが、それらはみな起こるべくして起きているというわけだ。
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