小山田圭吾炎上騒動に学ぶ、企業担当者が「ブラック著名人」とのコラボを避ける方法:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
東京オリンピック開会式の作曲担当をしていた小山田圭吾氏が、辞任する意向を関係者に伝えたという。それにしても、大会組織委員会はなぜ小山田氏を起用したのか。過去をちょっと調べれば、同級生や障害者をいじめていたことが分かるはずなのに……。
危機管理の本質とは「組織づくり」
危機管理というと、専門家は「会見をすぐに開くべき」とか「おじきの角度が甘い」とか「トップのメッセージが響かない」などとコミュニケーションの問題を声高に叫ぶが、これまで多くの不祥事企業に関わってきた経験から言わせていただくと、それはあくまで表面的な問題に過ぎない。
不祥事が多発するのは、組織が何を大切にすべきか、優先すべきかを見失っているからだ。では、なぜ見失ってしまうのかというと、組織の体制がそうなっていないからだ。組織が最も優先しなくてはいけないことを担当する人々に「権限」を与えていないのである。つまり、危機管理の本質とは、「組織づくり」なのだ。
組織委員会はそれに失敗した。本来の目的であるはずの「多様性と調和」を総務預かりにして軽んじたことによって、イベントの商業的成功を目的として著名人を起用したり、ムードを盛り上げる仕掛けを考案したりというセクションが主導権・決定権を握って、そのような面ばかりがゴリ押しされる。それがコロナ禍の国民には一層、不快に映るのだ。
おそらく、組織委員会の不祥事はまだ続くだろう。民間企業の皆さんはぜひともこの「大切なことを見失った組織」を反面教師として、なんのために自分たちはこのビジネスを進めているのか、誰のために会社を存続させているのかという目的に立ち戻った「組織づくり」を心がけていただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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