都庁のDX「シン・トセイ」 脱FAX・紙・ハンコを、いかに推進したのか:古い組織をどう変えていった?(2/5 ページ)
「シン・トセイ」をはじめとしたデジタル化へ向けた戦略を相次いで公表し、2021年4月には、デジタルサービス局を立ち上げた東京都。デジタル化の推進や、ICT人材の採用に取り組む4人の担当者にインタビュー
──2021年3月に「シン・トセイ」を公表されていますが、都庁内では現在、改革へどのように取り組まれていますか。
小野氏:都政のQOS、都民のQOL(Quality of Life)を高めるために、「シン・トセイ」に掲げる「7つのコア・プロジェクト」や「各局リーディング・プロジェクト」などさまざまな取組み(エグゼクティブサマリー(図1)参照)を進めています。例えば、「未来型オフィス」での新しい働き方や、具体の目標値を設定している「5つのレス(ペーパーレス、FAXレス、はんこレス、キャッシュレス、タッチレス)」達成に向けた取り組みなど、さまざまなプロジェクトの実践を通じて理念の浸透を図っており、また、こうしたさまざまな改革のなかで出てきた課題を解決につなげるべく日々取り組んでいます。
──現場では新たにデジタル化のための業務を行うのではなく、日々の業務のなかでできるところからデジタル化に取り組んでいるんですね。
前林氏:特別な研修などを行うわけではなく、「シン・トセイ」で定めた目標に向けて業務に取り組むことで方針の実現にあたっています。
多くの方は、公務の職場には古い組織や慣習が残っており、効率化が進んでいないことをイメージされると思いますし、私たち自身も働くなかで、そう感じる部分もあります。しかし、行政サービスを提供するうえで、業務の効率化は取り組むべき永遠の課題です。特に現在は、DXという考え方にも基づいて「どう都庁組織を変えていくのか」「効率化を図っていくのか」を検討し、「シン・トセイ」で定めた方針に対して都庁一丸で取り組んでいます。
──東京都では「シン・トセイ」の公表前から、「都政の構造改革レポート ver.0 〜都政のQOS向上のために〜」(20年11月27日)を策定するなどデジタル化の推進に取り組んでいましたが、東京都のデジタル化へ向けた動きが特に加速したと感じるポイントはありましたか。
南氏:やはり新型コロナウイルスの流行は大きな契機でした。対面業務を減らしたり通勤を抑制したりする必要が生じるなか、デジタル化が遅れていることが浮き彫りになり、組織や業務の全体的な構造自体を見直す流れとなりました。
小野氏:例えば、オンラインでは行えない申請があることなどを踏まえ、ウィズコロナ、アフターコロナにおいて行政はどのようにサービスを提供していくべきなのかを検討しました。コロナ禍で明確となった課題を踏まえて選定したのが、「シン・トセイ」で掲げる7つのコア・プロジェクト(図1)です。
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