都庁のDX「シン・トセイ」 脱FAX・紙・ハンコを、いかに推進したのか:古い組織をどう変えていった?(4/5 ページ)
「シン・トセイ」をはじめとしたデジタル化へ向けた戦略を相次いで公表し、2021年4月には、デジタルサービス局を立ち上げた東京都。デジタル化の推進や、ICT人材の採用に取り組む4人の担当者にインタビュー
3.ICT人材が活躍できるよう、既存職員が組織内でのコミュニケーションをサポート
──東京都では「ICT職採用特設サイト」を設けるなど、採用にも力をいれていらっしゃいます。
星埜氏:東京都ではICTを専門領域とする職種を新たに設けて採用をはじめており、2021年4月にはICT職として最初の人材が入都します。今後はこうして採用した人材の育成にも力を入れて取り組んでいきます。
また、即戦力として、数年間の任期を定めた外部人材も活躍しています。そのほか、週1、2日勤務の会計年度任用職員をはじめ、IT業界の方々の多様な働き方にあわせた勤務形態での採用を行っています。
──ICT人材の方を採用するうえではどのようなポイントをアピールしていますか。
前林氏:都庁には伝統的で古い部分があり、デジタル領域で遅れがあることは、私たち職員も自覚しています。一方で、改善すると決めればパッと変わる側面もあります。遅れがあるからこそ、多くの改善課題も存在しますので、我こそはと考えるICT人材の方による活躍の場は広いと思います。
小野氏:民間企業から転職してきたある職員から聞いたところでは、都庁ではデジタル化がまだ不十分なため、改善可能な領域は民間企業よりもスケールが大きい、やりがいがあると話してくれています。
──ICT人材の方にスキルを発揮してもらえるよう工夫している点はありますか。
前林氏:もともといる職員がコミュニケーションを細かくとったり、一緒にチームを組んだりするなどのサポートをしています。民間企業からきた方は、高い専門知識を備えていますが、行政組織に馴染むまでに時間がかかることがあります。行政と民間で風土や組織体系が異なるために活躍いただけないようなことは避けなければなりません。
──デジタルを用いて課題を解決するうえでは、実際の業務現場の担当者の方とのコミュニケーションも重要になりますよね。
前林氏:現場のデジタル化を支援するうえでは、高いデジタルスキルを持つ任期付きの職員に各局へ入り込んでもらい、二人三脚の形でアドバイスしてもらっています。
また都庁内に加えて、住民に近い行政を担当する市区町村のデジタル化も進めていく必要があります。各自治体の現場におけるICT知識向上のサポートがまだまだ必要な現状であると考えています。そこで、高いデジタルスキルを持つ任期付きの職員が区市町村に赴き、研修会を行ったりもしています。
星埜氏:ICT職種として求める人材像は「都政とICTをつなぎ、課題解決を図る人材」です。デジタルスキルを持っていることは前提として、行政のなかでデジタルの知識をどのように活用していけるかを考えられる方に、ぜひ活躍していただきたいと考えています。
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