「どうせ無理」と思い込むのではなく、「あたりまえ」を疑うことが大切な理由:水曜インタビュー劇場(澤円公演)(5/5 ページ)
「仕事の結果がでないなあ。この会社は自分に向いていないよ」と思い込んでいる人もいるのでは。こうした“思い込み”は、仕事をするうえで役に立つのだろうか。コンサルティング業務などを手掛けている「圓窓(えんそう)」を立ち上げた澤円氏に、話を聞いた。
「疑う」ことから始める
澤: 個人的な話になりますが、僕は物理的にも論理的にも混んでいるところが嫌いなんです。たくさんの人が集まっているところがあれば、「僕がいなくても大丈夫でしょ」と考えてしまう。逆に、少人数のところであれば、「自分が何らかの形で役に立つかも」と思ってしまう。
このような話は大企業に就職すべきか、ベンチャー企業で働くべきかといった議論に近いかもしれません。大企業に就職して、大きな組織の一部としてパフォーマンスを発揮できる人がいますよね。仕組みの中で結果を出すことができたり、出世競争が得意だったり。僕はそういうタイプではなくて、大きな組織よりも小さなところのほうが合っている。マイクロソフトは巨大な会社ですが、僕が所属していた組織は小さなところが多かったんですよね。ちょっと変わったミッションがあったり、やり方がユニークだったり、チームのメンバーが個性的だったり。
ここで大事なことは「会社の中のものさし」だけが正義だと思い込まず、「外のものさし」を持つこと。マーケットのなかで、自分はどんな場所にいるのか、自分はどんな価値を与えられるのか。「外のものさし」を持つことによって、いまの自分をより客観的にとらえることができる。そうすることで、自分の価値が見えてくると思うんですよね。
土肥: 日常生活を送るだけで、思い込んでいることがたくさんありそうですね。
澤: 「私には関係ないや」という思い込みによって、多くの人はいろんなものを除外しているのではないでしょうか。「私には関係ないや」と思ってしまえば、それらに関係する情報は入ってきません。拒否しているわけではないですが、関係ないと思い込むことによって、情報が入ってこなくなりますからね。つまり、自ら壁をつくってしまう。
「いやいや、自分は関係ないと思っていない」という人もいますが、情報を受け入れるスキマがちょっとしか開いていなければ、その情報を全てだと思ってしまう。結果、さまざまな情報が断片的になってしまって、「私にはチャンスがない」「私にはいいことがなかなかない」などと思ってしまう。ただ、考えてみると、それは開けている窓が狭いだけの話なんですよね。
また、思い込みがどんどん洗練化されていくと、「私にはこれしか見えない」といった状態になってしまう。年を重ねていくと、新しいことをやる勇気がどんどんなくなっていく。なぜなら、若い人から「そんなことも分からないのか」などと言われたくない、などと思い込んでいるから。結果、選択肢はたくさんあるのに、自身の可能性をどんどん狭めているのではないでしょうか。
思い込みを捨てて、自分の頭で考えて、少しずつ行動を変えていく――。一歩踏み出すだけで、結果は変わってくるんですよね。そのためにも、世間で「あたりまえ」とされている常識を探すのではなく、「疑う」ことから始めることが重要になってくるのではないでしょうか。
(後編を読む)
書籍&CDが出ました!
ITmedia ビジネスオンラインの連載をまとめた書籍『バカ売れ法則大全』(行列研究所/SBクリエイティブ)が発売されました。本連載「水曜インタビュー劇場」の人気記事をピックアップして、大幅に加筆。また弊誌では掲載していない記事もご紹介しています。また、本連載をまとめた『ササる戦略』(三才ブックス)も発売していますので、合わせてどうぞ。
さらに、水曜インタビュー劇場のMCを務める土肥義則のCDが発売されました。「全国経営者セミナー」での講演を収録していますので、ぜひビジネスのヒントに!
関連記事
- 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「安いニッポン」の本当の恐ろしさとは何か 「貧しくなること」ではない
新聞やテレビなどで「安いニッポン」に関するニュースが増えてきた。「このままでは日本は貧しくなる」といった指摘があるが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしていて……。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。 - 「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケ
定年を引き上げるニュースが相次いでる。現行の60歳から65歳にする企業が増えてきているわけだが、筆者の窪田氏はこの動きに懸念を抱いている。「長く働くことができていいじゃないか」と思われたかもしれないが……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.