花火商戦に“異変” 遊べる場所が減り続けていた「家庭用」が息を吹き返したワケ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
コロナ禍で打ち上げ花火が苦戦している。一方、家庭用の手持ち花火などは好調だ。「SNS映えする」「近所迷惑にならない」といった現代風の工夫が支持されている。
花火の文化的側面
これまで、花火業界の打ち上げ花火については、「花火大会の開催件数・規模は概ね一定であり、需要は安定基調」(日本政策投資銀行東北支店「花火産業の成長戦略」、2016年7月発表)とされてきた。一方で玩具花火は、「少子化、テレビゲーム、(遊ぶ)場所の減少から需要の伸びは大きくないと予想される」(同)と考えられてきた。
ところが、花火業者319社が加盟する日本煙火協会(東京都中央区)によれば、コロナ禍で20年は花火大会のおよそ9割が中止となり、打ち上げ花火の売り上げに壊滅的な打撃を与えている。21年も、集客力の高い有名な花火大会ほど、密をつくり感染拡大を招く恐れがあるという理由から、自粛を求められる傾向が強い。全国を見渡すと、大曲、長岡、隅田川、江戸川区、東京湾、天神祭、関門海峡など、大半の花火大会が中止になった。土浦は今のところ、秋が深まった11月6日(土曜日)に開催の予定だ。
花火のメーカーは年商5億円以下の中小零細で占められていて、江戸・明治の頃から脈々と花火師の家系が受け継いできたところが多い。それだけに、打ち上げ花火の需要が2年連続で9割近く消失し、今後の見通しもはっきりしない現状は、非常に厳しいものがある。こうしたことを踏まえると、五輪開催自体に批判は多々あろうが、開会式で首都・東京のど真ん中から花火を世界に発信できたのは、未来につながるきっかけとなったはずだ。
もともと、花火には鎮魂、慰霊、疫病退散の意味合いがあり、お盆の時期に灯篭流しと共に打ち上げられたと言われる。例えば、3大花火大会の1つである「長岡まつり大花火大会」(新潟県長岡市)。この花火大会は、1945年8月1日に旧市街地の8割が失われた長岡空襲における犠牲者の慰霊のため、翌年から行われた「長岡復興祭」から始まっている。花火には、死者を弔い無病息災を願う、重厚な文化的メッセージが込められている。
「お祭で気分が高揚し、人々が集まってお酒を飲んで、新型コロナに感染するから花火大会は望ましくない」という一点のみで、日本文化から排除・絶滅させて良いわけがない。
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