マクドナルド、「4つの戦略」で要注目の1〜6月期決算 先行投資の行方は?:飲食店を科学する(5/5 ページ)
マクドナルドの1〜6月における店舗の売上高が好調だ。8月に発表される第2四半期決算の結果に注目が集まる。コロナ禍を乗り越えるための「4つの戦略」と、先行投資の中身を分析する。
次世代を見据えたデジタル戦略
デジタル戦略を分析します。コロナ禍発生直後の20年3月23日の公式アプリアップデートにおいて「モバイルオーダー」機能をいち早く搭載するなど、積極的かつスピーディーなデジタルシステム開発を行ってきました。
筆者も実際にマクドナルドの公式アプリ使ってみました。
「オーダー」というボタンが設置されており、そのボタンを押すと自分が今いる近くのマクドナルド店舗が自動表示されます。このようなユーザー個人の情報などを踏まえた「パーソナライズドマーケティング」にも力を入れています。
筆者の世代(40代前後)は、マクドナルドと言えば、点線でちぎって使う紙のクーポンを連想すると思います。一方、アプリには「クーポン」ページもあり、時間帯別のさまざまなクーポンをデジタル上で見ることができます。
日本マクドナルドでは今後も決済方法の拡充を始めとしたさらなる機能強化を行い、利便性を高める方針を掲げています。そして、累計6600万ダウンロード(20年3月時点)を超えているアプリユーザーをさらに増やしていく計画です。
デリバリーに関しては、マクドナルドのスタッフが直接届ける「マックデリバリーサービス(MDS)」を強化しています。また、外部委託業者との提携を進めることで、デリバリー対応店舗を急激に増加させています。21年3月末時点で、デリバリー実施店舗数は「MDS756店舗」「Uber Eats1383店舗」「出前館1062店舗」「Wolt116店舗」です。全店合計では1629店舗となっています。外部業者との連携は、売り上げシェア拡大をする上では非常に重要な戦略ですが、一方で手数料増加というデメリットもあります。実際にマクドナルドの20年度におけるデリバリーや外部委託業者への手数料などの支払い額は12億円増加しています。
しかし、デリバリー市場は今後も成長が望める市場であることは間違いありません。同社としても47都道府県でのデリバリー導入を目標にさらなる投資を行っていく方針を打ち出しています。
ドライブスルーについては、リロケートやリビルド、改装などによりリキャパシティーを増強するだけでなく、「モバイルオーダー」で注文した商品を車に乗ったまま店舗の駐車場で受け取れる「パーク&ゴー」の拡大を行っており、21年3月末時点で全国の860店舗が対応しています。
コロナ禍という未曽有の状況の中でも「人材」「メニュー」「店舗」「デジタル」に積極的な投資を行うマクドナルド。20年決算においては、人材と店舗に対してコロナ禍前の19年比で58億円増となる投資を行っています。しかしその投資などの効果として売上高は19年対比で78億円増となりました。その結果、営業利益は19年の280億円に対して、20年は312億円と約32億円増加させることに成功しています。
時代の先を読んだ攻めの投資戦略が同社の好調な業績を支えているのです。
最後までお読み頂きありがとうございました。この記事が少しでもご参考になれば幸いです。
著者プロフィール
三ツ井創太郎
株式会社スリーウェルマネジメント代表。数多くのテレビでのコメンテーターや新聞、雑誌等への執筆も手掛ける飲食店専門のコンサルタント。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて料理長や店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う。最近では東京都の中小企業支援事業の選任コンサルタントや青森県の業務委託コンサルタントに任命される等、行政と一体となった飲食店支援も積極的に行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。
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