日本マイクロソフトだって悩んでいた 一筋縄ではいかぬデジタル人材育成をパーソルと協業で乗り切る!:社会人になってから学ぶって、難しい(4/4 ページ)
今は、デジタルシフトに対応できる人材が不足していることもあり、「リスキリングでデジタル人材を育成したい」と考える企業は少なくない。デジタライゼーションが急務とされる中で、企業はどのように社員のリスキリングに対するモチベーションを高め、デジタル人材を育成すればいいのだろうか。日本マイクロソフトとパーソルイノベーションの協業から、リスキリングの課題と解決策を探る。
「昨今の技術の発展により、デジタル人材の枠組みはガラリと変わったと思います。部門に関係なく、誰でもITツールに触れる機会がある。そういった中で、デジタルを普通に――例えばちょっとExcelを使って日々の業務をこなす人であれば、すべからく私はデジタル人材と呼んでいいと思いますし、そういった方々はさらに発展させたデジタルプロセス化に十分、貢献できるのではないでしょうか」
この意見には、パーソルイノベーションも同意を示す。岩田氏は、「われわれがフォーカスするデジタル人材は、レガシーシステムのモダナイズや内製化を担うエンジニア、そしてエンジニアが生み出すプロダクトを活用する人、大きく二分されます」と説明する。
「もちろん、一番ニーズが高いデジタル人材は技術を有するエンジニアなので、まずはそこを先行的に育成支援することが重要です。しかし、ノーコード・ローコード開発が話題になっているように、技術を活用してプロダクトを作っていく、DX化を進めていく人材も同時に不可欠です」(岩田氏)
こんな例がある。三重県伊勢市で食堂や屋台を営むゑびや。同店では、男女何名が、いつ、どんな天気の日に来店し、何を食べたのか、店員がデータ分析をすることで経営に生かし、顧客満足度と利益率を上げることに成功した。ここで活用されているのは、日本マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」だ。
柿内氏は、「エンジニアではない、デジタルに詳しいわけでもない一店員さんが利益率を左右するほどのデータ分析をしている――彼らは立派なデジタル人材です。技術者ほどの知識がなくても、クラウド&AIがあるからDX化を実現できる。デジタル人材とひとくくりにされていますが、その中にはエンジニアや、クラウドを開発、またはゑびやさんのように活用するクラウド人材など、さまざまな立場の方が含まれるのではないでしょうか」と話す。
世界のお尻を追いかけるのは、もうやめよう
最後に、伊藤氏に「なぜ、そこまで他社のデジタル人材育成に力を入れるのか」と聞いてみた。世界に名をはせるビッグテックとしてIT業界をけん引する同社だけに、世界と比較し、日本企業のDX化の遅れを憂いてのことなのだろうか。
しかし、伊藤氏には「そんなことには、何の興味もない」と一蹴されてしまった。日本は遅れているだとか、世界に追い付こうだとか、「もうやめましょう」と話す。
「そんなことよりも、日本が持っている強みを生かして、どうDXに向かって一足飛びに駆け上がるか――そのことを議論する方が、はるかに重要だと思います」。伊藤氏がいう“日本が持っている強み”とは、製造業によるモノづくり、それを支えるエンジニアたちや、“As Quality NO1”を実現する完璧性のあくなき追及だ。
「日本の製造現場では、企業の大小に関係なく、グローバル規模でビジネスを展開しています。『日本はIT音痴』という人もいますが、私はそうは思いません。世界で戦っていけるハイレベルなエンジニアはすでにたくさんいるからです。しかし、そのエンジニアリングという中で、ソフトウェア工学やデータサイエンスという部分は、おざなりになってきた――という部分は否定できない。日本はやっぱり、ソフトウェアよりもハードウェアが好きだし、強い傾向にあるんですよね」(伊藤)。
しかしだからこそ、リスキリングによって、さまざまな部門にデジタル人材が育ち、活用力や開発力へと知識を昇華できるようになった日本の可能性は、無限大かもしれない。
日本マイクロソフトの目標は、23年までに15万人のクラウド&AIにおける認定資格取得者の創出すること。そしてパーソルイノベーションとの協業により、25年までに高度デジタル人材を新たに2万人創出するとしている
「われわれはHR会社なので、何より働く人、企業の可能性を広げることに貢献したいと考えています。今回の協業のきっかけはデジタル人材育成というテーマでしたが、それに限らず多くの企業さまの人材育成を支援することで、『はたらいて、笑おう。』を実現できる仕組み作りに注力していきたいですね」(岩田氏)
両社の相乗効果により、リスキリングが多くの企業に浸透し“デジタル先進国ニッポン”へと飛躍できる日を期待したい。
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