最長2年、勉学のために休職できる 社員の学び直しを支援する、ヤフーの人事制度(1/2 ページ)
社会人が高等教育機関で学ぶ1つの足かせになっているのは、学びというものに対する会社、特に現場の上司らの無理解である。会社として全面的に社員の学びを支援しているのが、ヤフーだ。
社会人が高等教育機関で学ぶ1つの足かせになっているのは、学びというものに対する会社、特に現場の上司らの無理解である。会社として全面的に社員の学びを支援しているのが、ヤフーだ。
リクルートワークス研究所『Works』
『Works』は「人事が変われば、社会が変わる」を提唱する人事プロフェッショナルのための研究雑誌です。
本記事は『Works』166号(2021年6月発行)「学ぶ力・学び続ける力をいかに高めるか」より「action7 学び直し支援の人事制度を導入する」を一部編集の上、転載したものです。
2年を上限に勉学・研究のために休職できる
ヤフーには、大きくは3つ、社員の学びを支援する制度がある。
「1つはサバティカル制度です。目的を問わず、勤続10年以上の社員を対象に上限で3カ月、休暇を取れる制度をつくったのが2013年です。10年も働いていれば人によっては自らの振り返りの機会を持ちたくなる。その内省のための制度です」と話すのは、同社ピープル・デベロップメント統括本部ビジネスパートナーPD本部本部長の岸本雅樹氏だ。長期の海外旅行をする人、MBAのショートプログラムに参加する人、ボランティアなどで異質な出会いを求める人など、その使い方はさまざまだという。
その後、2014年に、最長2年まで大学や大学院など高等教育機関で学ぶことを支援するために新たに制度化したのが勉学休職制度である。
「サバティカル制度は期間が短く、大学や大学院での本格的な長期の学びを実現するのは難しい。そこで、勉学・研究のために長期で休職できるようにしたのがこの制度です。勤続3年以上で、なぜその教育機関を選んだのか、そこで何を学べるのか、学んで戻った後にヤフーでそれがどのように生かせるのかという3点を提示することが条件となります」(岸本氏)
勉学休職制度の活用例では、国内の大学院のほか、留学して海外の大学や大学院で学ぶケースも出てきているという。
そして、3つ目が2015年に制度化した、博士課程で学ぶことを支援する社会人ドクター支援制度だ。「理系のなかでもデータサイエンスや自然言語処理、機械学習、画像処理など特定の13領域に限られますが、修士修了後で博士課程を修了していなかったり、満期退学せずに就職したりした人が博士号を取ることを支援しています。会社としても基礎研究が非常に重要な領域であるため、学費の補助に加え、週1日は有給休暇扱いにして学びの時間を確保できるようにしました」(岸本氏)
制度化によって社員の学びの選択肢を増やす
比較的短いサバティカル制度はともかく、勉学休職制度や社会人ドクター支援制度は取得者が10名前後と、実際には希望者が出たときに“現場の運用”でなんとか対応できる数字である。それにもかかわらず、これらを制度化した理由は何か。
関連記事
- 「リスキリング」とは何か 有能な人材が欲しいなら、必要不可欠
新しいスキル・能力・知識を身につけていくことを指す「リスキリング」。これまでも「学び・学習(学び直し)」や「人材教育・人材育成」などがあったが、このタイミングでリスキリングに注目が集まるのはなぜか。 - NEC、りそな、パーソル──“息切れしない”企業改革、大手3社に共通する「ヒト投資」
働き方改革、リモートワーク、DX化、インクルージョン&ダイバーシティ――変化の速い事業環境の中で、企業が取り組むべき課題は山積状態。疲弊して歩みを止めることなく、会社の活力を生み出すためにはどうすればいいのか。少なくない企業が、「ヒト投資」という答えに活路を見い出している。大手3社に、その施策を聞いた。 - ジョブ型とメンバーシップ型を融合、ブリヂストンの人事制度は“日本型のスタンダード”になるか
ブリヂストンが中期事業計画の一環で、人事制度を改革している。その中で注目したいポイントが2つある。1つは、組織の階層構造のシンプル化。もう1つは、ジョブ型とメンバーシップ型を組み合わせた人事制度の導入だ。 - 「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのか
「来年度の目標は、残業時間ゼロ」──社長の突然の宣言は、まさに寝耳に水の出来事だった。準備期間は1カ月。取り組み方は、各部門に任せられた。現場はどう対応したのか?
© リクルートワークス研究所