50億円を投じてでも、新施設で「うなぎパイ」の思いを春華堂が再現したかった理由:地域経済の底力(1/5 ページ)
今年4月、春華堂が浜松市内にオープンした複合施設「SWEETS BANK」は、コロナ禍にもかかわらず連日のようににぎわいを見せている。ユニークな外観などに目が行きがちだが、この施設には同社の並々ならぬ思いが込められている。
JR浜松駅から南西にクルマを走らせること約10分。住宅と工場が立ち並ぶ道路沿いに、遠目からでも分かる巨大なテーブルと椅子が突如現れる。行き交う人たちは、一様に上を見上げたり、目を丸くしながら指をさしたりしている。
ここは、静岡のお土産品「うなぎパイ」を製造・販売する春華堂が4月12日にオープンした複合施設「SWEETS BANK(スイーツバンク)」だ。
建物の外観は、うなぎパイのコンセプトである「家族団らん」を表現したダイニングテーブルと椅子になっているほか、敷地内には春華堂のショップバッグなどの巨大オブジェを設置する。あらゆるアイテムが実物の13倍の大きさである。
建物には、春華堂の本社と、同社の菓子店、ベーカリーカフェ、さらには浜松いわた信用金庫の森田支店が入居する。コロナ禍での開業となったが、連日のように地元や近隣からの来客を集めている。
「新たな観光スポットになることで、周辺の飲食店やホテルが潤うなど、地域活性化につながれば。この浜松が全国から注目されたらうれしい」と、春華堂の山崎貴裕社長はこう期待を込める。
華々しくデビューしたスイーツバンクだが、ここまでの道のりは平坦(へいたん)ではなかった。当初の予定から4年も遅れて完成。総工費も約30億円だったはずが、約50億円にまで膨れ上がった。しかし、その背後には絶対に譲歩できない、山崎社長の信念ともいえるこだわりがあった。
新型コロナウイルスの影響は同社にも容赦なく襲(おそ)いかかり、目下のところ、経営状態は決して楽ではない。そうした中でオープンにこぎつけた新施設が目指すものとは何だったのか。
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