“日本一高い”北総鉄道は値下げできるのか 「やはり難しい」これだけの理由:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)
千葉ニュータウンを走る北総鉄道は日本一運賃が高い鉄道の1つ。理由は膨大な建設費が運賃に乗っていたから。しかし6月23日発表の決算には、2022年に累積損失を解消、値下げを検討するとある。値下げされても残念ながら相場より高い運賃が続く懸念がある。そこで筆者が、確実に値下げする方法を考えてみた。
千葉県、千葉ニュータウンを走る北総鉄道は「日本一運賃が高い鉄道」の1つだ。初乗り運賃は210円。大手私鉄やJR東日本より高いとはいえ、各地の市営地下鉄とほぼ同じ。しかし距離を伸ばすほど上昇率もアップして、京成高砂〜東松戸間は7.5キロメートルで450円。京成電鉄で同じ距離の運賃は190円だ。
北総鉄道で都心まで行くとして、千葉ニュータウン中央から日本橋までは36キロメートル、電車は京成電鉄押上線と都営地下鉄に直通運転するから乗り換えなし。所要時間48分で1150円(現金料金)。ほぼ同じ距離で、京急電鉄上大岡駅から日本橋までは38.1キロメートル、やはり都営地下鉄に直通運転で乗り換えなし。所要時間56分で650円だ。
東急電鉄たまプラーザ駅から三越前(日本橋付近)も東京メトロに直通運転で、所要時間48分。運賃は460円だ。これらの運賃と比較して北総鉄道の運賃は高いし、都心に向かうには京成電鉄と都営地下鉄の初乗り運賃も加算されるから高額になる。北総鉄道の6カ月定期ともなれば一財産で「財布をなくしても定期をなくすな」と揶揄(やゆ)されるしだいである。
北総鉄道の高額運賃の理由は膨大な建設費が借金となり、元利返済費用が運賃に乗っていたからだ。北総鉄道が開業した約50年前は上下分離や公設民営という考え方がなく、鉄道会社が土地代建設費を負担していた。この借金が有利子負債となってのしかかる。
しかし、6月23日に公開された「2020年度決算について(PDF)」で、「累積損失の解消に目途、今後は、ポストコロナに対応しつつ、運賃値下げの可能性の検討に着手」と記載された。
具体的には後半で「創立50年を迎える2022年に累積損失を解消し、値下げを検討する」とある。コツコツと実直に借金を返した。立派である。50年にわたる二世代住宅ローンを払い終わったような心境ではないか。
「高額運賃で悪名高い北総鉄道がついに値下げ」「膨大な建設費を返し終わった」と報じられて「よかったよかった」と言いたいところだけど、そんな単純な話ではない。残念ながら、値下げされたとしても相場より高い運賃が続き、期待は「ぬか喜び」になるかもしれない。
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