レアメタル戦争の背景 EVの行く手に待ち受ける試練(中編):池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
コバルトの問題が難問過ぎるので、今注目を集めているのが、従来のハイコバルト系リチウムイオン電池に代わる方式だ。最も早く話題になったのがリン酸鉄電池である。ついでナトリウム電池、そしてニッケル水素のバイポーラ型電池。長らく次期エースと目されている全固体電池もある。
さて、コバルトの問題が難問過ぎるので、今注目を集めているのが、従来のハイコバルト系リチウムイオン電池に代わる方式だ。最も早く話題になったのがリン酸鉄電池である。ついでナトリウム電池、そしてニッケル水素のバイポーラ型電池。長らく次期エースと目されている全固体電池もある。
どれも新技術として見所があっての登場だが、全固体電池以外には共通している特徴がある。それはハイコバルト系リチウムイオン電池の登場に伴って、一度旧態化した技術であるという点だ。ハイコバルト系リチウムイオン電池が主役に躍り出たのは、バッテリー火災対策技術が熟成したからだ。それまでは、例えばニッケル水素電池が主役だった。
ハイコバルト系リチウムイオン電池が発火のリスクを持ちながら期待されてきた理由は、エネルギー密度の高さである。現在バッテリーに共通して求められている、いやもっといえば足りないのはこのエネルギー密度だ。
今回コバルトの調達問題に端を発してコバルト系以外へのシフトが起ころうとしているが、結局はエネルギー密度が下がる方式へのシフトは双六の「ひとマス戻る」を意味している。エネルギー密度だけではない。コスト、安全性と合わせたトータルバランスが向上しないと、EVの進化としては中々に厳しいのだ。後編ではこれらのバッテリー方式のそれぞれの強みと弱点を仕組みの解説と共に明らかにしていきたい。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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