木造カバーで覆われた自販機はなぜ生まれたのか? 世界遺産「石見銀山」にて:3分インタビュー(2/2 ページ)
島根県の世界遺産、石見銀山にある自動販売機がちょっと変わっている。木造のカバーですっぽり覆われているのだ。自販機といえば「赤」「青」「白」がメジャー色な気がするが、なぜこのようになっているのか? 発案者に聞いてみた。
屋外機や電気メーターなどの”脇役”にも苦心
――実際に木製カバーを製作するのにどのくらい費用や時間がかかるのでしょうか?
渡部: 期間は1週間から10日程度です。私が自販機の寸法を測り、図面化しました。実際に製作するときには「角をどの程度斜めのするのか?」「被せる大きさはピッタリがいいのか、余白があったほうがいいのか?」など大工さんと相談しながら進めました。特に、自販機の特徴である色をできるだけ目立たなくするのに苦労しました。
最終的に全体をすっぽりと覆い、それぞれの商品だけが見えるように小窓のようなデザインにしました。商品の出し入れもしやすいようにカバーの前面は開くように設計しています。
また、材料には杉を使っています。松やヒノキほどの強度はありませんが、軽いので採用しました。仕上げは柿渋、ベンガラ(赤色顔料)、墨を調合して塗り、景観に馴染むよう工夫しました。もちろん定期的な塗り替えは必要ですが、風食や防水効果も多少は期待できます。
費用は材料から加工、現場設置までの手間を概算して30万円ほどだったと記憶しています。自販機を展開している会社も完成品を見て、同じ取り組みをやってみようと思ったらしいのですが費用を知って諦めたと聞きました。外壁を塗ってしまう方が安上りですからね。
――当時から改良などには取り組んでおられるのでしょうか?
渡部: 最初はカバー全体が木造でしたが、2代目のリニューアルのときは屋根を鉄板にしました。景観上は木造が望ましいですが、傷むスピードを抑えるためです。今は質の高い塗料もたくさんあるので木造でもできると思います。
また、改良ではないですが、自販機以外にも景観を損ねる要素が多く苦労しました。伝統的建造物群保存地区といっても、実際に人が生活している街なので屋外機や電気メーターなどが邪魔になってきたりします。設置されている場所によってもデザインが異なるので、どう街に馴染ませるか苦心しました。
――当時の反響や振り返っての思いを教えてください
渡部: 好評だったと思っています。他の地区からも木造カバーに関する問い合わせが入りました。
自販機だけでなくちょっとした生活機器なども景観を損ねる存在になりうるのは面白い発見でした。街並みを守りながら、街が盛り上がっていけば嬉しく思います。
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