高卒には「職業選択の自由」がない? 大卒より高卒の採用が難しい理由:相馬留美の「今そこにある商機」(1/6 ページ)
高校生向けの「就職合同説明会」をご存じだろうか。記者は現場に足を運んだところ、企業の話を聞くために、教師と制服姿の高校生がたくさんいたわけだが、そもそも高校生の就職はどのようにして決まるのだろうか。ちょっと調べると、過去の“遺産”が残っていて……。
一見何の変哲もない「就職合同説明会」だが、一点だけ違っているところがある。教師と制服姿の高校生が一緒に企業を見て回る姿があちこちで見られることだ。これは、日本では非常に珍しい高卒就職者向けの合同説明会なのである。
高校生の新卒採用支援を行うジンジブ(東京都港区)が主催する「ジョブドラフトFes」は、今年度だけで全国10都市、延べ2100人以上(7月末日時点)の高校生が来場しているという。
東京で開催された会場に足を運んでみたところ、高卒人材の就職先として多い製造業だけでなく、大手チェーン系の小売店や飲食店のブースにも数多くの生徒が並ぶ。出店社の一つであるラーメンチェーン、町田商店を運営するギフトのブース前にはかわるがわる高校生がやってくる。同社の人事担当者は、「飲食業は高校生からは人気がない。でも、ウチでは大卒も高卒も変わらない。昨年は10人の高卒者を採用しました」と話す。
この日、1社だけ参加していたWeb制作企業の前には、高校生が説明を聞くために列をなしていた。デザイン・システム制作会社のOookey・CEOの菊地伸さんは、「今年初めて新卒採用を始めたのですが、高校生も採りたいと思って参加しました。1人か2人くらいブースに来てくれればいいかなと思っていたら、ひっきりなしに人が来て驚きました」と話す。
生徒からはこんな声が聞こえてきた。
「今日は同じ高校の就職組が集まって参加しました。ITを学んでいるんですが、それを生かせる会社があるかなあと」(男子生徒)
「飲食希望なんですが、学校では見つからなくて来てみました」(女子生徒)
学校あっせんを業種でみると、外食企業やIT、職種では営業職がそれぞれ少なく、高校生が企業説明を聞く機会があまりないのだ。
生徒を引率していた教師は、「求人票は大量に来るが、(あっせんしたことのない企業に就職させる)経験があまりないので、どの会社を勧めていいのか、よく分かりません」と胸の内を吐露する。
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