イオンとヤオコー、スーパー業界の優等生がそれぞれ仕掛ける新業態の明暗:小売・流通アナリストの視点(1/5 ページ)
イオングループのスーパーにもかかわらず、トップバリュ製品を売らない新業態「パレッテ」。高品質が売りのヤオコーが新たに仕掛ける、低価格業態「フーコット」。両社の狙いはどこにあるのだろうか?
神奈川県郊外に、「Palette!(パレッテ)」なる謎のディスカウントスーパー(以下、DS)が出現しているのをご存じだろうか。
1号店のある大和市の周辺は、外国人居住者の多いことで有名な公営団地もある地域だ。周辺には有力DS、オーケーやロピアの店舗も複数出店していて、DSの実験場としてはちょうどいい場所なのであろう。なお、パレッテは2号店を横浜市鶴見区、3号店は1号店と同じ大和市内に出店している。
この突如として現れた謎の店舗パレッテを運営するのは、実はイオングループだ。ただ、パレッテの公式Webサイトにある会社概要欄には「株式会社パレッテ」という資本金1億円の社名が記されているのみで、住所もなく株主も非表示。イオングループの一員であるとは全く分からないようになっている。
一部報道によれば、イオングループが手掛けるDS事業において、東日本の核でもあるビッグ・エーの三浦社長もパレッテの役員に加わっているらしく、ビッグ・エーの新業態実験では、という臆測もされているようだ。
日経MJは7月16日、「イオン、DSを作り直す」と題する記事を掲載したが、これまでのイオンのDSは成功していたとは言い難い。
DSといえば、誰もが知るドン・キホーテ(単体売上7040億円、2020年6月期)、オーケー(5076億円、21年3月期)、知る人ぞ知るトライアルカンパニー(4251億円、21年3月期)、DSとは名乗ってこそいないが、食品も取り扱うコスモス薬品(7264億円、21年5月期)などが成長を続けている。そんな中、イオングループのビッグ・エーはグループ内のアコレと合併後でも売上1100億円規模で、昨年までは赤字だった。
こうした苦しい状況の中、イオングループがDS事業として投じたパレッテは、何を狙ったものなのであろうか。実際に行って確かめてみた。
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