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「3週間でピーク、1カ月でゼロ」中国の“社会実験”から見えるデルタ株の動き:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/5 ページ)
日本では緊急事態宣言が日常化し、もはや緊迫感は感じられない。対して新型コロナウイルスの市中感染リスクがほぼなくなっていた中国では、7月20日にロシアからデルタ株が流入し、感染者は30都市、約1200人にまで拡大。だが8月22日、新規感染者は1カ月ぶりにゼロとなった。その背景にある取り組みを紹介する。
南京市の国際空港へ流入したデルタ株
中国は入国者に対し、指定ホテルで最低2週間の隔離を義務付け、その間数回実施されるPCR検査で陰性にならないと外に出られない。全国の空港では毎日感染者が出ているが、これまではほぼ水際で止めていた。
しかし7月20日、江蘇省の南京禄口空港での定期PCR検査で清掃スタッフ9人が陽性になった。その後の調査で、7月10日にロシアから南京に到着した航空機の清掃を担当したスタッフが、防護服の洗濯・着脱ルールを徹底しなかったため乗客から感染したことや、ウイルスがデルタ株であることが判明した。
南京は全市民を対象にPCR検査を実施し、8月12日までの約3週間の間に235人の感染が確認された(無症状感染者を除く)。その半数近くが空港職員で、9割以上を空港関係者が占めた。
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