「3週間でピーク、1カ月でゼロ」中国の“社会実験”から見えるデルタ株の動き:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/5 ページ)
日本では緊急事態宣言が日常化し、もはや緊迫感は感じられない。対して新型コロナウイルスの市中感染リスクがほぼなくなっていた中国では、7月20日にロシアからデルタ株が流入し、感染者は30都市、約1200人にまで拡大。だが8月22日、新規感染者は1カ月ぶりにゼロとなった。その背景にある取り組みを紹介する。
揚州市の雀荘で発生したクラスター
南京市は空港職員の感染判明後、付近の住民に外出しないように指示し、高速バスや国内便を運休し、地下鉄も一部運行を止めた。
だが、空港エリアに住む64歳女性は7月21日朝、外出制限を無視して隣接する揚州市にバスで移動し、姉(70歳)の家を訪れた。その後、2人は24日まで4日続けて同市内の雀荘に出かけた。女性は27日に発熱し揚州市の病院を受診。濃厚接触者だった姉とともに翌28日に感染が確認された。
2人が通い詰めていた雀荘は150卓と大規模で、高齢者の憩いの場になっていた。8月8日までに、64歳女性の濃厚接触者63人、姉の濃厚接触者17人が感染し、ほぼ全員が雀荘利用者だった。また、2人の濃厚接触者以外でも、雀荘利用者16人、さらにその家族に感染が広がり、一大クラスターが形成された。感染防止に協力しなかった64歳女性は、その後逮捕された。
揚州市の保健当局によると、8月21日までに同市で確認された感染者は568人。その4割が60歳以上だったこともあり、重症者も2ケタに上った。また、同市ではPCR検査会場でも約40人のクラスターが発生した。感染対策が不十分で、肺炎の症状が出ている患者から近くにいる人に広がったという。
張家界市の観光地でも感染拡大
南京空港でのクラスター発生を受け、中国東北部にある大連市(遼寧省)は同空港からのフライト利用者を洗い出し、7月26日に3人の感染を確認した。
この3人は7月17日に大連空港を出発してトランジットのため南京空港に2時間滞在し、映画『アバター』のモデルにもなった世界遺産「武陵源」のある張家界市(湖南省)に到着。1週間観光していたことが判明した。
その後、張家界市では8月中旬までに72人の感染が判明した。旅行者を通じて感染は北京市や成都市などにも広がった。
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