「3週間でピーク、1カ月でゼロ」中国の“社会実験”から見えるデルタ株の動き:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/5 ページ)
日本では緊急事態宣言が日常化し、もはや緊迫感は感じられない。対して新型コロナウイルスの市中感染リスクがほぼなくなっていた中国では、7月20日にロシアからデルタ株が流入し、感染者は30都市、約1200人にまで拡大。だが8月22日、新規感染者は1カ月ぶりにゼロとなった。その背景にある取り組みを紹介する。
感染疑いの通報に奨励金も
各地方都市の発表を整理すると、7月20日に南京で発覚した感染はまず揚州市、大連市など11都市に拡散。次に大連市の旅行者が張家界市に持ち込み、同市から18都市に広がった。8月21日までに30都市の1272人が感染した。
20年4月の武漢封鎖解除以来、「ゼロコロナ」を旗印としてきた中国は、今回も市民生活や経済を犠牲にして、濃厚接触者の隔離、エリア封鎖、大規模PCR検査、そして人の集まるイベントや場所の中止、閉鎖などの封じ込めを行った。
中国でコロナ対策の指揮を執る鍾南山氏は7月31日、デルタ株の感染力の強さを考慮して濃厚接触者の定義を従来の「2日前に同じ家や職場にいて、1メートル以内の距離で食事や会議をしていた人」から「感染者の発症4日前から同一空間、同一職場、同一の建物にいた人は全員濃厚接触者」と、濃厚接触者の定義を大幅に広げた。このため、感染者が1人出ると数十人が濃厚接触者と認定され、隔離された。
観光都市の張家界市は7月29日、商店やカラオケ、劇場、マッサージ店などを閉鎖し、翌30日から観光スポットも休業した。また、旅行者はPCR検査を3回受けていずれも陰性との結果が出ないと市外へ出られなくなった。全市民にPCR検査を徹底するため、ヘリコプターで医療従事者を山奥の村にも派遣した。
揚州市は雀荘で感染した疑いのある人を探し出すため、通報者に数千元の奨励金を提供。市内中心部の住民には2〜3日ごとにPCR検査を行い、感染者が多く出た地域では各世帯の外出も3〜5日に1度に制限した。
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