「3週間でピーク、1カ月でゼロ」中国の“社会実験”から見えるデルタ株の動き:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(5/5 ページ)
日本では緊急事態宣言が日常化し、もはや緊迫感は感じられない。対して新型コロナウイルスの市中感染リスクがほぼなくなっていた中国では、7月20日にロシアからデルタ株が流入し、感染者は30都市、約1200人にまで拡大。だが8月22日、新規感染者は1カ月ぶりにゼロとなった。その背景にある取り組みを紹介する。
とことん我慢すれば2週間で収束
強硬策の結果、全国の新規感染者は8月9日の108人をピークに減少に転じ、8月16日以降は一桁まで下がり、8月22日、約1カ月ぶりにゼロになった。
7月20日に9人の陽性が判明した南京市は、48人の感染が判明した27日がピークで、8月5日以降は1日の新規感染者が0〜2人で推移し、13日以降は感染者が確認されていない。8月19日に市内の警戒レベルを下げ、22日には南京市外への移動を大幅に緩和した。
張家界市は7月29日に最初の感染者が確認され、8月8日の10人をピークに減少。8月15日を最後に感染者は確認されていない。
そして、全国で感染者が最も多く、高齢者の比率も高かった揚州市は、58人の感染が確認された8月5日をピークに、15日以降は一けたで推移、22日にゼロとなった。
多くの国が導入しているロックダウンすら難しい日本と、当局の指示に従わず市外に移動した市民を逮捕したり、交通を即日封鎖することが可能な中国は、制度や前提条件が大きく違うため、対策そのものは参考にはならないだろう。
だが、高頻度、広範囲でPCR検査を実施し、感染者のあぶりだしと行動追跡がしやすい中国の動きから、デルタ株がわずかな隙をついて流入し容易に拡大することや、地域の特性がが広がり方に反映されること、そしてとことん我慢すれば、約2週間で収束が見えることが分かる。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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