どうなる「関西スーパー」争奪戦 勝負に出た「オーケー」に“危うさ”を感じてしまう理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングが関西スーパーを買収すると宣言。オーケーも同スーパーの買収をすると表明した。オーケーにはどんな事情があるのだろうか?
「関スパ」は業績好調
まず、関西スーパーの意思は明確だ。H2Oの提案を受け入れる方針である。8月31日に、関西スーパーの福谷耕治社長は、H2Oの荒木直也社長と共同の記者会見も開催した。H2Oはホワイトナイトというわけだ。
関西スーパーは、関西では「関スパ」「関スー」の略称で呼ばれ、兵庫県、大阪府、奈良県に65店舗を展開。21年3月期決算は、売上高に当たる営業収益が約1309億円(前年同期比3.8%増)、経常利益約31億円(同19.5%増)と順調。直ちに業務の大改革を断行しなければならない内容と思えない。コロナ前の20年3月期も増収で、利益2桁増の決算だった。
ダイエーが創業した2年後の1959年に、関西スーパーは1号店を兵庫県伊丹市にオープンしている。以降、阪神間、大阪市、神戸市を中心に店舗展開しており、店舗の分布が大阪と神戸の間に集中する大都市近郊型立地が1つの特徴だ。後述するが、この大都市近郊型の立地戦略という一点のみはオーケーと共通する。
お店の売りは、生鮮。関西スーパーでは生鮮3品と総菜にこだわりを持つ。仕入先に趣旨を理解してもらい、“この野菜は○○さんの手によるもの”といったように自信を持って販売。一日を通して安定した鮮度と品質を保つため、売場と直結した作業場で調理するインストア方式を採用した。
また、総菜は第4の生鮮という考えのもと、新鮮なネタを生かした寿司、揚げ立てのフライや天ぷら、食卓のもう一品に便利な中華などの総菜、素材を吟味し鰹や昆布でダシを取った煮炊物などを提供している。
全国各地の漁港や大阪の中央卸売市場より、いきの良い魚介類が毎日売場に届く仕組みを構築。牛肉は宮崎県を中心に肥育される「720(ナニワ)グループ牛」も販売。これは、黒毛和牛とブラック・アンガス牛を掛け合わせた仔牛をオーストラリアから輸入して、大自然の中で伸び伸びと育てた国産牛で、黒毛和牛並みの品質の肉をお値打ち価格で提供する。
月曜と火曜を特売日として、本体価格より10%引のセールを実施している。
移動スーパー「とくし丸」を兵庫県と大阪府で17年から運営。18号車まで増えた。高齢者などの買物難民を対象に小型トラックで商品を届けるサービスで、地域貢献性が高い。
関西スーパーの広報は「地域の皆さまと共に社会貢献を通じて課題解決を行う、トータルソリューション型スーパーマーケットを目指している」と、自社のコンセプトを語る。
一方で、オーケーは、乱暴に言ってしまうと関西ならば「サンディ」のような業態だ。サンディのように段ボールを積んだ陳列ではないが、生鮮には強くなく有名メーカーのナショナルブランドが激安。関西スーパーとオーケーは似ても似つかぬ業態で、ディスカウンターに転向しないかと勧められて尻込みするのも当然だろう。
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