どうなる「関西スーパー」争奪戦 勝負に出た「オーケー」に“危うさ”を感じてしまう理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングが関西スーパーを買収すると宣言。オーケーも同スーパーの買収をすると表明した。オーケーにはどんな事情があるのだろうか?
H2Oが買収しなければいけない事情
関西スーパーを買収しなければならない事情は、H2Oにも、オーケーにも双方にある。
H2Oの21年3月期決算は、売上高が約7392億円(前年同期比17.6%減)、経常損失が約29億円の赤字。百貨店を主力とする事業が苦戦している。同社の中心となっているのは、阪急百貨店と阪神百貨店だ。
コロナ禍で収益を上げるには、自宅の近くにあって、日常のショッピングができるスーパー部門の強化が不可欠で、今回の関西スーパーの買収は株主の期待にも応えたものだ。
既にH2Oの売上高に占める百貨店の比率は47%と半分を切っており、かねてよりスーパーの強化を図ってきた。阪急オアシスは、百貨店が展開する高級スーパーのイメージで売ってきたチェーンで、大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県に76店を展開。
一方、14年にH2Oが買収したイズミヤは現在再建中。ダイエーがたどったように、総合スーパーから食品スーパーへと転換中だ。店舗数は80店で、大阪府を中心に、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県に店舗がある。
21年3月期の既存店売上高は、前年比で阪急オアシスが100.6%、イズミヤ101.7%と堅調に推移。コロナ禍の巣ごもり需要の追い風もあって、食品スーパー部門に限れば少額ながら約5億円の利益も出た。
一方、H2Oは関西スーパーの約11%を保有する筆頭株主。さらなるスーパー強化のために、株式交換によって、H2Oは関西スーパーを子会社化する。関西スーパーを持株会社にして、その傘下にイズミヤと阪急オアシスと新しく設立した関西スーパーの運営会社を設置し、再編を行う方針だ。再編後は単純計算で221店となる。
それぞれの屋号は維持される。関西スーパーの業績は、阪急オアシス、イズミヤよりはるかに好調で、特に生鮮では指導的な役割を果たすと考えられる。
企業価値向上の観点ではどうか。阪神タイガースや宝塚歌劇団と同じグループになるので、店舗の近所に住む人にとっては、タイガース優勝セールなどがあると相乗効果が出るかもしれない。関西人としては何よりダイエーとそごうが衰退してがっかりした後に、関西圏に大流通グループができるという楽しみも提供できる。
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