サントリー新浪社長を叩いても、「45歳定年制」が遅かれ早かれ普及するワケ:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
サントリーホールディングスの新浪剛史社長による、「45歳定年制」の提言が波紋を呼んでいる。「サントリー不買」を呼びかける人も出ているが、ボコボコに叩くのは“正しい”ことなのか。筆者の窪田氏は……。
手口が巧妙化
こういうシビアな現実の中で、45歳定年制を必要以上にバッシングすると、水面下に潜ってしまう。批判を恐れる企業が、いかに世間から分からない形で45歳を追い出すかという感じで、手口がこれまで以上に分かりづらく、そして陰湿なものになってしまうのだ。
このあたりは暴力団の違法行為をイメージしていただければ分かりやすい。規制を厳しくしても、暴力団は水面下に潜って手口を巧妙化させるだけだ。スーツを着て、盃も受けずにカタギのような顔でビジネスに手を染めたり、半グレのような存在も増えていく。皮肉な話だが、厳しい規制が違法行為をより複雑に、より摘発できないような形に“進化”させてしまうのだ。
表向きは終身雇用を維持しながらも、実際は45歳で定年に追い込まれる。雇用システムも、これと全く同じ道をたどってしまう可能性が高い。45歳定年制を叩けば叩くほど、45歳を退社へ追い込む実態が水面下に潜ってブラックボックス化してしまうのだ。
例えば、ベテラン社員を冷遇したり、ハードなノルマや実現不可能なプロジェクトを押し付けたりして自主的な退社をするように仕向けているような会社が、クサイものにフタをする感じで、セカンドキャリア研修など転職や起業をバックアップするような制度を充実させていくのだ。
つまり、今回の新浪社長の炎上によって、経済界が45歳定年制というテーマを真正面から議論することに腰が引けてしまい結果として、この問題が「ネットやSNSで叩かれないよう、うまいこと45歳を辞めさせる方法を考えよう」というフェアじゃない方向へと流れてしまう恐れがあるのだ。こんな不毛な話はないではないか。
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