サントリー新浪社長を叩いても、「45歳定年制」が遅かれ早かれ普及するワケ:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
サントリーホールディングスの新浪剛史社長による、「45歳定年制」の提言が波紋を呼んでいる。「サントリー不買」を呼びかける人も出ているが、ボコボコに叩くのは“正しい”ことなのか。筆者の窪田氏は……。
終身雇用は維持できない
という話を聞くと、「45歳定年制の議論など必要はない! 日本は終身雇用で成長したのだから、どうすれば雇用を守れるのかという方向で知恵を出すべきだ」と思う人もいらっしゃるかもしれない。
が、一昨年にトヨタ自動車の豊田章男社長が、「終身雇用の維持は難しい」と発言したことからも分かるように今の日本企業にはもはや、新卒採用と定年退職という両輪をバランス良く回していくだけの体力がない。
ご存じのように、「家族主義」を掲げる日本企業は、シニア社員にとって「定年まで面倒を見てくれる療養施設」という側面もあった。20代から40代までは安い給料でコキ使われ、会社にすべてを捧げる。その代わりに会社は、そのような功績者たちを50代以降も食わせていく。現場で稼ぎを出さなくても、管理職や閑職で雇用し続けた。ある意味で慰労だった。
慰労が待っているので、どんな理不尽な要求にも応えた。滅私奉公ができた。しかし、そういうエコシステムがここにきてついに維持できなくなってしまった。デフレが悪い、経営者が悪い、竹中平蔵が悪い、などいろいろなもののせいにしているが、実はもっとも大きいのは人口減少だ。
日本で高度成長期からバブル崩壊以前まで終始雇用というシステムが成立したのは、人口が右肩上がりで増えていたからだ。翻って日本では今、毎年、鳥取県と同じ人口が減っている。これだけの規模で労働者と消費者が日本から消えているのに、企業の数はそれほど減っていない。補助金や助成金で支えてもらっているからだ。そんな「死に体経営」の企業が山ほどある中で、終身雇用なんて維持できるわけがないのだ。
そこに加えて近年になって、「働かないおじさん」という言葉が注目を集めてきたように、若いときの功績で定年退職まで雇われるシニア社員が、実は会社の成長にとってマイナスであることがバレてしまった。
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