「女性だからではなく実力で選べ!」が、日本企業の競争力を低下させているワケ:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
女性管理職の平均割合は8.9%で過去最高――。とはいえ、海外に比べると、まだまだ。なぜ日本企業は女性活用が進まないのか。
自民党総裁選に出馬した野田聖子氏が、「閣僚の半分が女性になるように目指す」と宣言したことが、ネットやSNSで以下のような批判を受けている。
「性別ではなく実力で選べ!」「半分ありきで女性ばかりを優遇するのは逆差別だ!」
ただ、世界的に見れば、これはそれほど叩かれるような話ではない。120を超える国で政府や政党がパリテ(男女同数)を目指すため、候補者や議席は一定数女性に振り分ける「クオータ制」を導入している。
政治というパワーゲームの中で「実力」を優先すると、どうしても力の強い男たちが主導権を握ってしまう。そこであらかじめ女子枠を確保して男女同数を実現するという考えが、欧米のみならずアフリカ、南米、アジアでも広まっている。「男女を同数に」と口にしただけで叩かれる日本のような国のほうが少数派なのだ。
例えば、カナダやオーストラリアでは政党による自発的なクオータ制が行われており、オーストラリアでは19年に連邦上院で議員76人中の38人が女性となりパリテが実現している。メキシコでも2002年から法的候補者クオータ制が導入されたことで、女性議員比率が上がり14年には50%を達成、19年には、全公的部門にパリテを適用する憲法改正が行われている。00年より法的候補者クオータ制が導入された韓国でも、比例代表では50%以上クオータが義務化されており、奇数順位に女性を配置しなければならない。
日本の国会議員の女性比率は10%未満。中国の国会にあたる全人代(全国人民代表大会2018年)でさえ女性比率は24.9%。つまり、日本は人権問題を抱える独裁国家も真っ青の“ゴリゴリの男社会”なのだ。こういう状況で「男女平等」を叫んでいるだけでは100年経っても変わらない。だから、まずは閣僚からパリテにしていく。国際社会の感覚としては、しごくまっとうな考え方だ。
関連記事
- サントリー新浪社長を叩いても、「45歳定年制」が遅かれ早かれ普及するワケ
サントリーホールディングスの新浪剛史社長による、「45歳定年制」の提言が波紋を呼んでいる。「サントリー不買」を呼びかける人も出ているが、ボコボコに叩くのは“正しい”ことなのか。筆者の窪田氏は……。 - 「安いニッポン」の本当の恐ろしさとは何か 「貧しくなること」ではない
新聞やテレビなどで「安いニッポン」に関するニュースが増えてきた。「このままでは日本は貧しくなる」といった指摘があるが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしていて……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「オレが若いころは」「マネジメント=管理」と思っている上司が、ダメダメな理由
「オレが若いころは……」「マネジメントとは管理することだ」といったことを言う上司がいるが、こうした人たちは本当にマネジメントができているのだろうか。日本マイクロソフトで業務執行役員を務めた澤円氏は「そうしたマネージャーは、その職を降りたほうがいい」という。なぜかというと……。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.