日本端子に学ぶ、中国進出企業はネットで叩かれないため何をすべきか:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
「日本端子」が叩かれている。同社はコネクタや圧着端子の製造販売をしていて、河野太郎氏が株を保有し、弟・二郎氏が社長を務めている。そのため、ネット上では批判が殺到していて……。
身の丈に合っていない
では、なぜネットでは「日本端子の中国法人は太陽光パネルに部品供給」となったのか。中には、さらに話が盛られて「太陽光ビジネスの会社」と拡散している人もいる。これらの情報発信者たちが根拠として挙げているのは、Webサイトに太陽光パネルの画像とともに添えられたこんな文言である。
「未来に続くクリーンエネルギーとして注目を集める太陽光発電システムなど、日本端子はこれからのエネルギー開発に貢献しています」(同社Webサイト)
自動車の依存度が高い日本端子が、なぜこんな見栄を張ったのかというと、これもB2B企業の方ならばお分かりだろう。「新規顧客開拓」のためだ。
部品メーカーなどは一つの分野で品質や専門性を磨いてきたので、よくも悪くも顧客やニーズが固定してしまう。しかし、それではジリ貧になるので新規開拓を目指す。これまでやってなかった分野や、成長分野へのチャレンジだ。
そこでまずはWebサイトやカタログで、太陽子パネルとかEV、インダストリー4.0をイメージさせる「先端技術にも関わってます」的なビジュアルを前面に出す、という手段に出る会社が多いのだ。
自動車が8割を占める日本端子のWebサイトにある太陽光パネルも、そのような意味合いのものである可能性が高い。それが「中国=太陽光パネル」という構図に結び付けられて、「日本端子は太陽光発電ビジネスでもうけている」というストーリーが組み立てられたのではないか、と個人的には考えている。
つまり、ここから得られる教訓は、「事業内容」をしっかりと出しておくことと、「イメージ画像の取り扱い」だ。いくら会社をおしゃれに見せたい、先進的な取り組みをしていることをアピールしたいとしても、身の丈に合わないイメージ写真をWebサイトやカタログに載せてしまうと、それが勝手に1人歩きをして、身に覚えのない疑惑にされてしまうのだ。
1960年から自動車メーカーの下請けをやってきた日本端子には、外の世界に事業内容を細かく開示する理由がない。だからWebサイトの内容も薄い。公開情報に対する意識が低いので、あまり深く考えず、実績のない太陽光発電のイメージを掲載してしまったのではないか。
もしそうなら同情する部分もあるが、親中政治家としてネットで叩かれる河野一族が株主にいる企業としては、危機管理意識が欠けていたと言わざるを得ない。
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