日本端子に学ぶ、中国進出企業はネットで叩かれないため何をすべきか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
「日本端子」が叩かれている。同社はコネクタや圧着端子の製造販売をしていて、河野太郎氏が株を保有し、弟・二郎氏が社長を務めている。そのため、ネット上では批判が殺到していて……。
特別待遇でもなんでもない
さて、次に(2)の「出資比率で破格の特別待遇」だが、これはそもそも特別待遇でもなんでもない。このような扱いをされている日本企業がゴロゴロあるのだ。
例えば、12年11月、中国江蘇省昆山市に日本端子の100%独資の「昆山日端電子科技有限公司」が開業しており、これが河野洋平氏の中国への政治力の賜物だとネットでは断罪されている。が、この4カ月前、愛知県名古屋市で、自動車の研究開発支援事業をしている日本テクシードという会社が、中国で「特酷時度汽車技術開発」という会社を設立した。これは日本テクシード100%の出資だ。
また、コネクタ事業で有名なイリソ電子工業(横浜市)も、日本端子と同様に江蘇省に生産拠点として「南通意力速電子工業有限公司」を設立しているが、こちらも日本資本比率100%。連結子会社である。
さらに日本端子が「昆山日端電子科技有限公司」を設立したおよそ1年後、トヨタ紡織が広東省に合弁会社「河源豊田紡織汽車部件」を設立しているが、こちらは日本が75%、中国メーカーが25%出資している。ネット上では日本端子の北京法人は、中国資本が40%に抑えられていることもあって「破格の待遇」ということなので、こちらは「ウルトラ特別待遇」となる。
なぜこんなにも石を投げれば当たるほど「破格の特別扱い」があふれているのかというと、日本政府としても、中国進出する部品メーカーなどに「単独出資」を推奨していたからだ。
日本端子が江蘇省への進出を準備していた11年3月、日本貿易振興機構(ジェトロ)は「2010日系自動車部品販売調達展示会」(JAPPE 2010)の出店企業やバイヤーへのインタビューをまとめたレポートを公表している。その中で、日刊自動車新聞編集委員の以下の言葉が紹介されている。
「中国に進出するにあたっては、単独出資や現地資本との合弁、技術援助など様々な形態が考えられる。ただ、部品サプライヤーの場合は、単独出資で現地法人を設立した方がいいことは間違いない」
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