日本端子に学ぶ、中国進出企業はネットで叩かれないため何をすべきか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
「日本端子」が叩かれている。同社はコネクタや圧着端子の製造販売をしていて、河野太郎氏が株を保有し、弟・二郎氏が社長を務めている。そのため、ネット上では批判が殺到していて……。
なるべく丁寧に説明する
この理由は2つある。まず、独資企業ではなく技術援助の形だと技術漏えいが問題だ。中国に工場進出をして、現地スタッフを雇ってもその工場長や技術開発スタッフが会社を辞めて、自分で事業を興したりというリスクがある。また、自分は辞めずに家族や友人にノウハウを流す事態が発生しがちだからだ。
もう一つは合併の場合、中国側にキャスティングボートを握られてしまう。先のレポートにも、「合併の場合は事業拡大や運営にあたっての決断が迫られた時、中国の合併形態では役員会などの場で全会一致が必須なので、日本側の考え方だけでは決定できないからだ」とある。
こういう論調の中で、日本端子は江蘇省へ進出した。100%独資になるのは当然と言えば当然なのだ。仮に日中関係が悪化した際にも、中国側に経営に参入されなければ、中国に進出している日系メーカーにも安定的に部品が供給できる。いわゆるチャイナリスクを回避する危機管理の一つだ。
しかし、ネット上ではまったく逆のことが言われる。同社Webサイトの「昆山日端電子科技有限公司」の説明に、「有事に備えてお客様の足元で生産活動を行っています」という説明を、「日中軍事衝突時に、中国メーカーに部品を供給するための裏取引だ!」という風に解釈されているような人もいらっしゃるのだ。
ただ、実はこれもWebサイト上の説明不足が招いた側面もある。中国進出の部品メーカーからすれば「独資」は経営の独立性を守るためというのは常識だが、ネット上でとにかく「中国共産党と親密」というストーリーを組み立てる人はそんなことは知らない。だから、「ネットやSNSで切り取られる」ことを先回りして、なるべく丁寧に説明するのだ。
例えば、先ほどの「有事に備えてお客様の足元で生産活動を行っています」という説明ではあまりに情報が少ないので、「有事? 日中戦争か? お客様ってのは中国企業だろ!」と受け手の好きなように解釈できてしまう。
そこで、「独資によって経営の独立性を持つこの会社は、有事に備えて、現地の日系メーカーなどのお客様の足元で生産活動を行っています」という意図をしっかりと伝える。
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