コンビニ弁当の価格が“三極化” セブンは「270円」を投入、ミニストップは「599円」が好調:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
500円前後がボリュームゾーンだったコンビニ弁当の価格帯が広がっている。大手は200円台や300円台のミニ弁当を相次いで発売。一方、ミニストップは599円という高額の弁当が売れている。
ミニストップの599円弁当
ミニストップでは、599円という高単価の3本柱が目立ってきた。その3本柱とは、「駅弁風弁当」シリーズ、「ずっしり極!」シリーズ、「チャーシュー弁当」である。
駅弁風弁当シリーズは、外出や旅行などの自粛で、非日常への欲望が高まる中、旅気分が味わえるように開発。駅弁の良さである「温めなくてもおいしい弁当」「具材にもこだわった弁当」を、コンビニならではの買いやすい価格で提供することを目指した。
1000円以上する高額な駅弁も珍しくないが、価格はかなりこなれている。今年1月より毎月1〜2品を提供。5月末までに累計30万食を突破するヒットとなった。
第1弾は「イベリコ豚重」と「鮭はらこ飯」を提案。現在は、第10弾として9月21日から「黒毛和牛 牛バラ焼き弁当」と「四国産鯛めし弁当」を販売中だ。
なお、鮭はらこ飯は人気になり過ぎて、発売から12日で完売してしまった。そこで、もう一度食べたいという顧客のリクエストに応えて、第7弾として7月6日から期間限定で復活している。これは、脂が乗って厚みのある塩こうじに漬けた鮭ハラスをメインにしている。程よい塩味にした鮭フレークに、いくらもトッピングして具だくさんに仕上げた。ごはんは3種類のだしを使用した和風の味飯となっている。
また、駅弁風弁当では、郷土の食文化に通じている地方の工場に企画を任せているものもある。従来の地方の工場は、本部で企画した商品をつくることに専念していたが、駅弁風弁当は郷土色の強い駅弁の雰囲気を表現するために、新しい試みとして地方の知恵を活用した。例えば、黒毛和牛 牛バラ焼き弁当は東北エリアの開発商品だ。また、第9弾の「味噌ヒレかつ弁当」は東海エリアの開発商品である。
一方、ずっしり極!シリーズは若い層にアピールしたボリューム系の大盛を特徴とした高価格弁当だ。駅弁風弁当シリーズが中高年をターゲットとしているとは対照的だ。今年3月からシリーズ化されている。
現在は、7月13日に発売した「ずっしり極!タルタルチキン南蛮弁当」と「ずっしり極!やみつきスパイス鶏弁当」が店頭に並んでいる。タルタルチキン南蛮は、総重量約600グラムというがっつり感がインパクト抜群。やわらかく仕上がったチキンに自家製タルタルソースなど、味にもこだわっているとしている。
チャーシュー弁当は今年3月に発売されて以来、2回のリニューアルを経て、定番化している商品。千葉市から内房にかけてのエリアのソウルフードと呼ばれる“チャー弁(チャーシュー弁当)”をほうふつとさせる。ご飯に4枚のチャーシューが乗っただけのシンプルな内容だ。5月末までに累計50万食を突破しており、ヒットしている。こちらも若い層に人気がある。
チャーシューは厚さ約6ミリで、ご飯になじむこだわりのタレの改良を進めている。
ミニストップは19年7月に、100円おにぎりを発売。安さで差別化してきた。しかし今回は、高価格弁当の3本柱を投入することで単価アップを図り、成功している。
コンビニ各社の弁当は、テレワークが普及したことでオフィス街の売り上げが減少し、しばらく苦戦していた。しかし、価格帯の幅を広げることで見事に復活してきている。しかも、低価格帯と高価格帯でシリーズ化が進行し、これまで成し得なかった弁当のブランドが確立しつつあるのが面白い。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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