台頭するハイボールやレモンサワー サントリーは「ビール」をどう売っていくのか:仕掛け人を直撃(1/3 ページ)
今年4月にサントリーが発売した「パーフェクトサントリービール」。発売から3カ月で年間計画の5割を達成する好調な滑り出しを見せている。一方で、消費者の好みが多様化しているが、同社はビールをどのように売ろうとしているのか。
前編では、「パーフェクトサントリービール」が誕生した経緯を紹介した。後編では、消費者の好みが多様化する中で、サントリーがビールをどのようにアピールしていこうとしているのかを取り上げる。
総務省統計局の家計調査によると、2020年、1世帯当たりの年間支出額で見たとき、外食費(外での飲酒代含む)は大幅に減少した。
外での飲食機会が減ったぶん、それを上回るほどではないが、家での消費は増えている。19年3月を100とすると、21年3月時点で内食率は113%に増加している。また、家庭内飲酒率は130%と、より大きな伸びを示している(食MAP調べ)。
サントリーの機能系ビール類は、健康意識の高まりにより、20年2月から販売実績が前年超えする月が続いた。その意味で、今年4月に発売された糖質ゼロビール「パーフェクトサントリービール」は、トレンドを捉えたタイミングでの登場となった。
「アフターコロナの世界を考えても、人生100年時代といわれていますから、日常でできる健康対策として、機能系は間違いなく定着し、さらに拡大していくだろうと考えています。
ただ、今の時代に求められるビールのあり方として、機能系は重要な要素のひとつではあるものの、それだけで全てのユーザーを満足させられるわけではありません。
パーフェクトサントリービールは、お腹周りが気になりはじめる30代以上の層をメインターゲットに据えていますが、ビールに限らず、お酒に何を求めるか、どんなお酒を飲みたいかについては、コロナ禍以前より多様化が進んでいました」
こう話すのは、パーフェクトサントリービールのブランドマネージャー、稲垣亜梨沙氏だ。
コロナ禍は好みの多様化にさらに拍車をかける可能性もある。先ほど挙げた家計調査では、支出が最も伸びた酒類は「ウイスキー」で、前年比36.6%増となっている。
さらに、「チューハイ・カクテル」が32.5%増、「他の酒(ウオッカ、ブランデーなど)」が25.2%増という状況だ。これらは、「発泡酒・ビール風アルコール飲料」の増加率16.8%を上回っている。また、「ワイン」(12.0%増)、「焼酎」(10.2%増)も健闘している。
そして、もともとの消費量の違いもあるが、ビールの伸びはそれらより低い。
ウイスキーの伸びが大きいのは、低カロリー・低糖質という特徴が、急激に高まった健康志向とマッチしたから、という分析もある。
パーフェクトサントリービールのように、機能系ビール含め、今後もヒット商品は登場するだろう。また、20年の酒税改正によって、ビールと新ジャンルの税率差が縮まったが、26年にはビールと発泡酒、新ジャンルの税率が全て同じになる。
そうした追い風があっても、消費者の変化に対応しきれるのか。ビール業界は楽観視できるような状況ではなさそうだ。
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