台頭するハイボールやレモンサワー サントリーは「ビール」をどう売っていくのか:仕掛け人を直撃(2/3 ページ)
今年4月にサントリーが発売した「パーフェクトサントリービール」。発売から3カ月で年間計画の5割を達成する好調な滑り出しを見せている。一方で、消費者の好みが多様化しているが、同社はビールをどのように売ろうとしているのか。
好みの多様化は止まらずクラフトビールメーカー急増中
多様化という意味では、20〜30代の意識変化も顕著だ。
サントリーが独自に調査したところ、20〜30代は、特定のメーカーや特定のブランドのビールを飲みたいというよりも、いろいろなものを飲みたい、楽しみたいという志向が強いことが見えてきた。
大手メーカーが手を変え品を変え、さまざまな限定品を出すのは、そんな志向にこたえるためでもある。サントリーでも今年の7〜10月、毎月「ザ・プレミアム・モルツ」の限定品を発売する。
その一方で、わざわざ限定品を出さずとも希少価値があるのが、小規模のブルワリー(ビール醸造場)から生み出される、いわゆるクラフトビールだ。
大手メーカーと比べれば生産量が少ないため、「いつでも」「どこでも」手に入れられるものではない。「飲んでみたいからわざわざ取り扱っている店まで行く」というのは、酒好きにとってはちょっとしたイベントだ。
ブルワリーとしても、既存のビールと似通ったものを作るのであれば存在意義がないから、自分たちが飲みたいもの、飲んでほしいものを作り上げるために、とことんこだわる。
日本では長らく、大手メーカーによる、のどごし重視のピルスナータイプばかりが流通していた。クラフトビールメーカーの出すペールエールやIPAに触れて「こんなビールもあるのか」と初めて知った人は少なくないだろう。
現在、クラフトビールは10年代中盤からの第3次ブームとされる。国内のブルワリーはここ数年で急激に増加し、500を超えた。
第3次ブームでは、サントリーはじめ、大手メーカーも「クラフト」と銘打った商品を売り出しはじめた。大手までクラフト市場に参入し、個性的な味わいのビールがこれまでにないほど出回るようになった。結果、大手と中小規模メーカーとの垣根は曖昧になりつつある。
ただ、大手メーカーの商品に対して、ストーリーを求める人はまだまだ少ない。その点では、クラフトビールメーカーだけではなく、国内で300を超えたワイナリーもライバルだ。
「パーフェクトサントリービールもザ・プレミアム・モルツも、材料にこだわりがあり、製法にこだわりがあります。
ストーリーはブランドが選ばれる理由の根幹になるものですし、お客さまに対してお話したいことはたくさんあります。ですから、これまで伝えきれていなかった価値をどうやってアピールしていくかは問題意識としてありますね」(稲垣氏)
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