興隆するHRテック市場で、採用テックがなぜ今注目なのか?(前編)(2/3 ページ)
市場が急成長している採用テック。テクノロジーをてこに、採用の世界が効率化・高度化が進む「採用テック」が、今求められる理由は主に2つあるという。
一つは人事側の業務オペレーション効率化、コスト削減への期待である。企業側から見ると、これまでの採用業務は一言でいえば人海戦術であった。
大量の応募者と履歴書の受領、内示書や関連資料の送付を繰り返し、社内では面接官の手配や評価フィードバックの回収や催促を行う。自社の人事システムに応募者の基礎情報を入力するにしても、ほとんど紙ベースでやりとりをしていたので、非効率だった。リモートワーク環境では、もはや成り立たないような前時代的な業務プロセスだろう。今後は応募書類、応募者情報管理、面談結果管理などのデータベース化、電子ワークフロー化がなされて効率化が進むことが期待されている。
もう一つの側面は、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、主に応募者側の企業に対する期待値向上やコンバージョン対策(採用プロセスからの離脱を抑える)の動きが見られるためだ。端的にいえば、応募者目線で非常にストレスがたまる非効率なコミュニケーションや前時代的な業務手続きを改善しないことには、有望な応募者を取りこぼしてしまうだろう。
多くの消費者にとって、各種SNSでのバーチャルコミュニケーション、アマゾンや楽天、Uber Eatsに代表されるデジタル市場での購買体験が日常化している。採用の市場でも同様に、SNSや現代的なテクノロジーを利用することを応募者側が望んでいる。
一方で、日本は特殊な採用市場であり、これまで採用テックをけん引してきた米国市場や他先進国とは違う見方があることも事実である。日本ではいまだ新卒一括採用が中心であり、マイナビやリクナビなどの大手採用支援プラットフォームが企業と学生双方のニーズを集めて、ある意味寡占市場になっている。また、中途採用は採用エージェント経由に極端に偏っており、企業への直接応募やLinkedInなどのSNS経由の採用が欧米に比べればまだ進んでいない。
しかし、今後は日本でも採用テックで大きな飛躍があると筆者は予想している。
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