興隆するHRテック市場で、採用テックがなぜ今注目なのか?(後編)(2/3 ページ)
海外では採用テックは採用のバリューチェーン(流れ)に沿って、CRM、ATS、オンボーディングという区分でさらに細分化されており、そこで製品もすみ分けがなされている。
ソフトバンクはIBMのワトソンを活用し、1500人の過去の履歴書データを教師データとして使って、AIに学習を施した。その結果、書類選考で従来に比べて圧倒的な業務効率化と省人化を実現した。一方で同社の採用チームはAIで生み出した余剰時間を有効活用し、AIによって不採用となった応募書類を人間がチェックすることで適切な候補者を見落とすリスクを軽減している。
また、電通グループに属するセプティーニは選考プロセスを全てオンライン化しており、具体的にはオンライン自己分析ツール、AIアドバイザー(AIチャットボット)、キャリアフィードバック、VRインターンシップなどデジタル化を採用場面で推進し、頻繁に東京へは就活に行けない地方学生のニーズをくみ取るなど効果をあげている。
ほとんどの採用テックがクラウド製品でサブスクリプション契約ゆえに、人事部側の導入難易度は以前よりも下がっている。また、先行する米国市場でも一つの会社のなかで、CRMやATS、選考・アセスメントツールを複数導入するケースがほとんどだ。採用テックはコアHCM(基幹人事システム)とは異なり、1つの製品で統合的な運用をするよりは、良いものがあれば組み合わせ・すみ分けをしながら使うBest of Breedの発想(ベンダーやアーキテクチャの違いにこだわらず、各分野でそれぞれ最適な製品を選定して組み合わせる)が良いはずだ。
ピープルアナリティクスに今後は期待 一方で課題も浮上
採用テックは人事効率化や応募者のユーザーエクスペリエンス向上が主な導入目的と前編で説明したが、その先にも大きな期待効果がある。それはピープルアナリティクスによって採用の精度を継続的に向上させることだ。
残念ながらどの企業でも採用チームは「目標採用人数をいつまでに取れるか」が目的になりがちで、その採用した人材が職場で本当に活躍しているのか、していないとすれば採用時の目利きが違っていたのか、職場の育成環境が問題なのか? といった人材マネジメント全体の改善には関与できていないのが実態だ。
ところがデータドリブンで採用を進めると、採用時の評価と実際の職場での評価パフォーマンスの相関を分析することが容易になる。また自然言語処理の技術で、応募者が書いた志望動機書や面接官が評価表に書いた自由記述欄といったテキストデータも分析できるようになり、採用精度の向上への貢献が期待されている。
EYジャパンのコンサルティング部門では自社で独自開発したJEFTYというAIツールを新卒採用に生かし、過去内定者の小論文を分析し、優秀者傾向を把握した後、AIが有望と判断した小論文の応募学生は優先的に面談を進めるなどの試みをしている。
しかし良いことばかりではない。
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