9割の会社が人事評価制度で失敗する「5つの理由」:新連載(1/2 ページ)
テレワーク全盛の昨今、人事評価制度の運用はさらに難しくなっています。人事評価制度で失敗する企業には共通する特徴がある、というのが筆者の見解です。本連載では、失敗理由を大きく5つに分けて各回で紹介します。
この連載について
今回から、連載「9割の会社が人事評価制度で失敗する理由」をスタートします。人事評価制度に運用側として携わっている方は、大変ショッキングなタイトルと思われたことでしょう。あるいは、現場で評価を受ける側(被評価者)には、「うんうん」と大きくうなずいた方もいるかもしれません。
本連載は、拙著「9割の会社が人事評価制度で失敗する理由」(あさ出版)をベースに、最新の傾向を踏まえ一部内容をアップデートしつつ、連載用にコンパクトにまとめたものになります。
どちらかというと、初めて人事評価制度の導入について検討する、主に中小企業の経営者・人事担当者の方をイメージした内容ですが、中小企業での問題は、中堅・大手企業でも共通する普遍的な課題であることが多く、既に制度を運用している企業であっても、見直し・改善に役立てていただけると思います。
書籍は、筆者が人事コンサルタントとして実際に担当した企業の事例をストーリー形式で紹介する内容になっていますので、ぜひ手に取ってみてください。
勤務先の人事評価制度 満足度はわずか4.4%!?
「9割の会社が人事評価制度で失敗」と聞くと、少々乱暴に聞こえるかもしれませんが、企業の人事評価制度の改善に日々携わっている立場からすると、まんざら言いすぎとも思えない現実があります。
「失敗」をどう定義するかによっても印象が異なるでしょうが、仮に「多くの従業員が自社の人事評価制度について満足(=自身に対する評価結果と評価のプロセスについて好意的に評価)しており、人事評価制度の活用が企業文化として根付いている状態」を成功と捉えるのであれば、大半の企業における人事評価制度の実態は程遠いものです。
アデコが2018年に実施した「『人事評価制度』に関する意識調査」によれば、「勤務先の人事評価制度に満足しているか」という問いに対し、明確に「満足」と回答した割合はわずか4.4%となっています(図表1を参照)。
「どちらかというと満足」という回答まで含めると37.7%まで引きあがるものの、それでも過半数には届きません。評価者・被評価者別でみると、被評価者の方が35.7%とさらに低いです。
また「勤務先の人事評価制度を見直す必要があるか」という問いに対し、実に77.6%が「見直す必要がある」と回答しています(図表2)。
他の人事評価制度に対するアンケート調査でも、大まかにいえば、同様の傾向を示しており、いかに人事評価制度が不満を引き起こしやすく、失敗につながりやすいか(逆にいえば満足度を上げにくいか)ということが伺えます。
テレワーク下でさらに高まる、企業の人事評価制度に対する関心
上記のような実態に加え、テレワーク全盛の昨今ではさらに人事評価制度の運用が難しくなってきているといえます。評価をする側が評価を受ける側の仕事ぶりや成果を客観的に判断することが物理的に難しくなってきているからです。
HR総研が21年に実施した「テレワーク下における人事評価の実態調査」によれば、「テレワーク下では人事評価が出社時よりも困難であると感じるか」という問いに対して、74%が「そう思う」と回答しています(図表3を参照。正確には「非常にそう思う」が18%、「ややそう思う」が56%)。
テレワーク下で人事評価を行うにあたっての具体的な課題としては、「勤務態度を実際に見ることができない」「他のチームメンバーとのコミュニケーションの状況が分からない」といった項目が並びます(図表4を参照)。
もっとも、これらの課題はテレワークが浸透する以前から人事評価制度運用の課題として挙げられてきた内容ではあります。ただテレワークが進むにつれ、これまで人事評価を行うにあたって参考にしてきた情報を入手する機会が減少し、さらに人事評価制度の運用が難しくなってきている、といった事情が伺えます。
人事評価制度で失敗する企業には共通する特徴がある、というのが筆者の見解です。テレワーク下で人事評価が難しくなってきていることは現象面の一つにすぎないものの、従来よりも企業が人事評価制度で失敗しやすい環境になってきており、テレワークがその要因の一つになっていることは否定できません。
あらためて、企業が人事評価制度で成功するためには、逆に失敗する理由を体系的に理解した上で、自社の状態に合わせて正しく対策を行うという視点が不可欠です。このことは、テレワーク下における人事評価制度運用でも同様です。
9割の会社が人事評価制度で失敗する5つの理由
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