「グランピング市場に価格競争が起こる」 ブームの火付け役、星野リゾートが仕掛ける"生き残り戦略":成長期から成熟期へ(1/3 ページ)
「グランピング市場に価格競争が起こる」。そう話すのは、グランピングブームの火付け役といわれる星野リゾートが運営する「星のや富士」の総支配人だ。コロナ禍で三密を避けられるレジャーとしてより一層の注目を集めたグランピング。アフターコロナ時代の生き残り戦略に向けて、どのような対策を取っていく必要があるのか。
「毎週、日本のどこかでグランピング施設がオープンしているのではないか」と思うほどに、開業のお知らせを目にするようになった。グランピングは、コロナ禍での三密回避レジャーとして高い人気を誇っている。一方、「数が増えすぎて飽和市場になっているのではないか」「アフターコロナでは需要が落ち込むのではないか」という懸念もある。
日本でのグランピングブームの火付け役は、星野リゾートだといわれている。同社は、2015年10月に富士山のふもとに「星のや富士」を開業した。
同施設の総支配人、松野将至氏は、今後のグランピング市場について「現在は成長期から成熟期に向かっている段階。今後、飽和状態になり、価格競争が起こるかもしれない」と話す。
グランピングという言葉が流行(はや)りだしてから、体感としてはそんなに年月が流れていないような気もするが、なぜここまで早いスピードで成長したのだろうか。また、価格競争で淘汰されないために、グランピング事業者はどのような対策を取っていくべきなのか、話を聞いた。
グランピングは、いつ日本に持ち込まれたのか?
グラマラス×キャンピングの造語である「グランピング」。誕生の歴史は1980年代の米国にさかのぼる。米国の山岳地方では大自然に囲まれたラグジュアリーなリゾート体験としてグランピングが流行していた。星野リゾートの星野佳路代表も実際に現地で体験したという。米国に限らず、さまざまな自然豊かな国でグランピングが定着していた。
グランピングは「大自然を通して圧倒的な非日常体験」を実現すること。星野代表は、自然豊かな日本とグランピングの相性の良さを確信。「観光事業を盛り上げる起爆剤になるのでは?」と考え、15年に「星のや富士」を開業。グランピングという言葉の認知拡大に努めた。
「星のや富士が開業する前にグランピングとうたっていた施設は3つほどだったと記憶しています。三重県の『伊勢志摩エバーグレイズ』、東京都・豊洲の『WILD MAGIC』、静岡県・熱海の『初島アイランドリゾート』です」(松野氏)
当時は星のや富士を入れて、4つほどしかなかったグランピング施設も、20年12月の時点で354施設に上っている(出所:全国グランピング協会)。いくらグランピングが、星野リゾートの肝入りプロジェクトだったとしても、市場の成長スピードが早すぎる気もする。松野氏は、その理由として「参入障壁の低さ」を挙げる。
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