自動運転の4車種一気試乗 見えてきた各社の考え方:高根英幸 「クルマのミライ」(6/6 ページ)
各メーカーや企業が開発した自動運転車を乗り比べた。これにより1台だけ試乗するのでは見えてこない自動運転に対する考え方、システム実現へのアプローチの違いなどが、改めて浮き彫りになった。
レベル2がパーソナルカーでは最適、は当面変わらず
欧州と日本では道路構造や渋滞の環境も異なるから、レベル2の自動運転でも求める性能や能力には違いがありそうだ。
ハンズオフ機能は、技術としては素晴らしいが、実際にドライバーが空いた両手で何ができるわけでもなく(飲み物を飲むなど程度はできるが片手で十分だ)、両手の置き場所にも困る。クルマによっては、ACC作動中は右足の置き場所にも困った。ブレーキペダルの前で甲を持ち上げて維持しているのは、足首が疲れるし、だからといってとっさの時にブレーキペダルが踏めない状態でいるのも不安が残る。
また制限速度の変化に合わせてACCの設定速度を上下させる機能も登場しているが、高速道路では周囲の走行ペースに合わせる必要があり、法律と制御と実際の交通をどうマッチングさせるかも大きな課題だ。
自動運転を搭載するのは、当面はレベル2のハンズオン状態で十分だという持論は、試乗して確信を得た。もちろん渋滞時のみに限ってレベル3を実現したホンダの考え方にも共感できるし、レベル2のままハンズオフを実現しているメーカーの努力も理解できる。
レベル3で現在の制限の時速60キロ以上に速度を引き上げようという動きもあるようだが、運転の主権委譲がある以上、高い速度で運用することは危険だと思う。
首都高速は交通量が多く、整備が追い付かないという現状もあるのだろうが、オリンピック開催では1000円値上げして一般車両を締め出したことを振り返れば、どうにでもなりそうなものではないだろうか。都市高速であるのに、高速道路並みの距離性料金へと値上げを目論んでいるようだが、その前に税金を投入しても自動運転が安定した走行ができる環境に整備すべきだろう。
クルマ側にばかり対応を要求する自動運転分野のいびつな構造に改めて気付かされたのも、今回の試乗の収穫であった。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。企業向けやシニア向けのドライバー研修事業を行う「ショーファーデプト」でチーフインストラクターも務める。
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