ホリエモンが北海道で仕掛ける「宇宙の民主化」 地方創生のモデルケースとなるか:「宇宙版シリコンバレー」作る(3/6 ページ)
2040年には約110兆円規模に成長するといわれている宇宙産業市場。宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」の取り組みとその背景を余すところなくお届けする。
世界で一番打ち上げに適しているのは北海道
――堀江さんは13年に、ISTの工場や本社を大樹町に設立しました。なぜこの地を選んだのですか。
堀江: ロケットを作りたくても、作る場所がなかったんです。ロケット射場を探していた11年当時はまだSNSも発達していなくて、人づてで探すしかありませんでした。
北海道赤平市でエンジンの実験ができるようになって、「じゃあ打ち上げどうするの?」となった時に、赤平市の方々が、宇宙のまちづくりを進めていた大樹町を紹介してくれたんです。鹿児島県の肝付町や、千葉県にある潰れた遊園地の跡地で打ち上げようとしていた中で、ようやく「約束の地」を見つけたという感じでした。
小田切: 北海道大樹町にはスペースポートを置く利点がいくつかあります。まず、東と南が太平洋に開かれていること。第2に、「十勝晴れ」といわれるように晴天率が高く、ロケット打ち上げに大きなメリットがあること。第3には、他の土地と比べ航空路や海上航路が交錯しないため、打ち上げの際の融通性が高いことも挙げられます。
また、アクセスがいいことも魅力です。海外の射場では、街から車で4〜5時間はかかるところもありますが、われわれは東京から3時間程度で大樹町に来られるんです。ホテルもあり、オフの日には温泉や観光も楽しめます。食や大自然など観光地として世界的にも有数の魅力を誇る北海道は、ロケット事業者や人工衛星の企業にとって人気のスペースポートになるでしょう。
堀江: 世界中の射場を分析しましたが、世界で一番打ち上げに適しているのは、間違いなく北海道です。ISTの工場から10分で射場に着きますし、SSO(太陽同期軌道)からLEO(低軌道)、静止軌道まで全て同じ場所から打ち上げられます。
――北海道が宇宙産業で発展していくにあたり、今後の課題は何ですか。
堀江: 唯一足りていないのは「政治」です。政治が明確なメッセージを持てるかどうかが鍵になります。「宇宙産業は、実はすごいんだ」ということを認識しなければいけない。それができていないのは、私たちの力不足だと思っています。
EV(電気自動車)をめぐる議論も、欧州各国が自国の産業競争力を高めるためのポジショントークをしているという「政治」の側面もあると考えています。私たちも、自動車に代わる産業分野として「宇宙」があるじゃないか、と話をしていきたいと思っています。
小田切: 政府も「宇宙産業を、これからの基幹産業にしていく」と掲げていますが、特に北海道は非常に大きなポテンシャルを持っていると考えています。歴史をたどると、林業から始まり、製鉄、石炭、製紙業も立派な産業としてありました。ただ残念ながら、これが全て過去形になってしまっているんですね。そこで、将来の北海道の基幹産業とすべく、地域として36年前に始めたのが、宇宙産業だったんです。ようやく形になってきたので、これからは国も巻き込みながら、しっかりと産業として育成することが重要だと思っています。
堀江: 宇宙ビジネスには「技術の総合格闘技」的な部分があって、それを過小評価しているところがあると思います。日本は、産業の総合競争力は素晴らしいと思っています。
「鉄は国家なり」ともいわれていますが、鉄を作れないとロケットは作れない。維新の志士たちが、西洋から科学技術を持ってきて、高炉を作り、鉄鋼を作り、そこからさまざまなサプライチェーンを作ってきた。それから、工業製品を全て自分たちの力でつくれるようになった。高炉があって、特殊鋼を作れるから、工具が作れる。だから、工作機械も作れる。これらが全部サプライチェーンとなっているわけですが、それがある国は世界中探しても珍しいです。
小田切: 北海道は、工業高専が多くあったり、理系の大学がいくつもあったりします。「人材の地産地消」と言っていますが、地元の高校を卒業した若い皆さんが地元で、しかもロケットを作る会社で働けることが大事だと思っています。そういったことも行政などと連携しながら進めていきたいです。
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